転校生 Special Edition←戻る
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 Seventh step




 相田との待ち合わせ場所に移動しながら、ヒカリと鈴原、二人の仲にちょっと照れてみたりする。

 「でも、良かったわね、ヒカリ。まんざらでもないみたいよ?」

 あたしはヒカリの耳に顔を近づけてそう言った。

 「じゃ、じゃあどうして叩いたりするのよ?」

 ヒカリが首を傾げてあたしに聞いてきた。

 「変なこと言うからよ。まだ子供もいないのに孫の話なんてするから・・・。」

 「アスカ、鈴原の言った”まご”って馬に子供の子って書く方の馬子よ?」

 ・・・え?馬に、子?

 馬子?

 「馬子って何よ?」

 「あたしも知らないわよ。でも、馬子にも衣装っていうのは、綺麗な服を着ると誰でもそれなりに見えるっていう意味なの。」

 だから、アスカが怒ったのかと思った、ってヒカリが言う。

 えーと・・・?

 ・・・あ、そうか!

 や、やっぱり怒るところで良かったんじゃないのっ!

 それにしても、ムカツクっ!

 そうこうしているうちに相田と合流。

 今度は今度で何も言わずにいきなり写真撮影開始。

 ま、まぁ、悪い気はしないけどさぁ?

 「なんや?ケンスケ、普段着やんけ?」

 ・・・。

 折角人がいい気分になりかけてるのに〜・・・。

 げしっ!

 あたしは鈴原に蹴りを入れた。

 「な、なにすんねん!

 「うるさいうるさい!

 あたしは鈴原がこっちを向く度に蹴りを入れながらシンジの家へ向かった。

 「こんばんわ。シンジ君を迎えに来ました!!

 鬱憤を吐き出すように大声を出す。

 あたしの声を待っていたかのように玄関の扉が開いた。

 ヒールの音がする。

 ユイおばさまだわ・・・。

 「こんばんわ、おば・・・・・。」

 はぁ・・・。

 おばさまはとっても綺麗なイブニングドレス姿だった。

 かしゃっと音がして我に返る。

 今の何?

 ・・・相田・・・後で、没収しないと・・・。

 まぁ・・・確かに、ユイおばさま、綺麗なんだけど・・・。

 「じゃあ、いってきます・・・。・・・

 シンジの目が一瞬大きくなった。

 あたしを・・・見たから?

 まさか、ね・・・。

 レイを、見たのよね?

 お願い!そう言って。

 そう言ってくれれば、あたしは嫌な女にならずに済む・・・。

 「なんでシンジは浴衣やあらへんのや!

 またも響く標準から外れた日本語・・・。

 鈴原の大声で、シンジは言葉を途中で飲み込んだように見えた。

 「え?そんなこと言われても・・・。だいたいケンスケだって浴衣じゃないじゃないか!?」

 「わいはいいんちょが”浴衣じゃないといけない”っちゅうから昔の浴衣無理矢理着とんのや。いいんちょ?どういうことやねん?わいだけやん。男で浴衣着とんの・・・。」

 ・・・んなこと、どうでもいいでしょうっ!!?

 どかっ!

 あたしは鈴原に向かって飛び込みざまに膝蹴りをお腹に決めた。審判が見てなかったらフスバル(サッカー)じゃ当たり前よっ!・・・多分。

 「さ、行くわよ、馬鹿シンジっ!!

 あたしはシンジを引っ張るようにしてお祭り会場に出発した。

 「んなこというたかて・・・。」 

 「うるさいうるさいうるさいうるさぁいっ!!

 今日は鈴原が口を開くだけでムカツクっ!

 ・・・。

 なんでだろう・・・。

 もしかしたら、焦っているのかもしれない。

 あたしをおいて進展していく二人に、追い抜かれたような気がして・・・。

 それとも、もしかしたら、上気しているのかもしれない。

 あたしの後ろをのほほんと歩いてくる、シンジの視線で・・・。

 「アスカ、もう蹴らないでよ・・・。」

 突然ヒカリの咎める声がしてあたしは我に返った。

 言われてみれば、ずっと蹴り続けた鈴原の足はちょっと泥だらけかも。

 「あ、着いた!!」

 あたしは誤魔化すように、お祭の灯りの中に向けて走った。



 そっと周りを窺う。

 お祭特有の華やいだ雰囲気が充満している。

 相田がいない・・・好都合だわ。

 あたしは真剣な表情で型取りをやっているレイに話しかけた。

 「レイ。」

 「取れなかったです。」

 ちょっと悔しそうな顔で口を尖らせている。

 何にでも真面目なんだから・・・。

 「そんなの、どうでもいいのよ。」

 あたしがそう言ったら不満そうに一層頬を膨らませた。

 可愛いやら使えないやら・・・。

 「今からあたし達離れるわよ。シンジ連れて。」

 きょとんとした顔をしている。

 この顔は、ここにみんなを誘導した最初の目的をすっかり忘れてるわね。

 「いい?次はヒカリの番でしょ?で、シンジを連れて出て行く。どうなると思う?」

 「ヒカリさんと鈴原君と相田君が残る。」

 あ、全然周り見てないわ。

 「相田?あぁ・・・あいつ、もういないわよ?」

 そう言うとこっちが慌ててしまうほど律儀に周りを確認する。

 相田がいないことがシンジに判っちゃったら困るのよっ!

 もぉっ・・・。

 「だから、いい?」

 あたしは無理にレイを止めて矛先をシンジに向けることにした。

 「シンジ、ちょっと・・・。」

 「なに?アスカ?」

 こっちも相変わらずのんびりした感じ。

 シンジって、人混み嫌いって言いながら、一旦その中に入れてしまうとこっちがやきもきするくらい落ち着いちゃって・・・。まぁ、そういうところがいいんだけどさ・・・。

 「あのね、言いにくいんだけど、レイがお手洗いに行きたいの。」

 あんまり使えないからこういう役にしちゃえ。

 「え?そうなの?綾波?」

 シンジはふっと真剣な表情を浮かべた。 

 「べ、いた・・・。」

 別に、とか言い出さないでよね。

 あたしはレイのお尻をつねってそれ以上喋らせないようにした。

 「え、えぇ・・・。」

 レイはちょっと歪んだ笑顔を作った。

 「じゃ、ちょっと探してみる。」

 シンジはあたし達の先になって歩き出した。

 作戦成功。

 やー。やっぱりシンジって頼りになるわ。単純で。

 「どうして私なんですかぁ?」

 ちょっと涙声のレイがあたしに囁く。

 「だって、トイレなんてかっこ悪いじゃん?」

 まさか”あんたが鈍いからおしおき”なんて言えるわけないじゃん。

 「あったよ。綾波。」

 「あ、ありがと、碇君・・・。」

 少し引きつった笑顔が気になるけど、まぁ、そのくらいなら誤魔化してあげるわ。

 (・・・すぐ出てきたら蹴るわよ!

 あたしは笑顔は崩さずに、足で蹴る真似をする。

 「待っててあげるから。」

 だめ押しに簡易トイレの前を塞ぐように立つ。

 「僕も?」

 シンジが当然のことを聞いてくる。

 「当たり前でしょ?」

 っていうか、あんたを引き留めるための作戦なのよ。

 ぱたん・・・。

 諦めたような音がしてトイレの扉が閉まった。

 「綾波、顔引きつってたよね?」

 話題に困ったシンジがレイの表情のことを聞いてきた。

 ・・・よく観察してるじゃないの。

 「我慢してたんじゃないの?」

 かさっとトイレの中で小さな物音がした。

 多分聞こえてたのね。

 悪いけど、もうしばらく出たら駄目よ?

 「先戻ったらだめかな?」

 「駄目に決まってるでしょ?」

 こういう状況が苦手なシンジはそわそわと落ち着かない。

 ちょっと、幻滅。

 レイは後ろにいるけど、一応あたし達も二人きりよ?

 何か気の利いたこと言えばいいじゃない。

 さっき言い損ねた、浴衣の話題とか、お祭りの雰囲気とか、星空の話とかさぁ?あんた、一応天文部でしょう?

 「時間かかるね?浴衣だからかな?」

 あぁ、そう。

 レイの方が気になるのねっ!

 あたしはトイレの中にも聞こえるように、ちょっと顔を横に向けた。

 「もしかしたら大き・・・。」

 かちゃ。

 「お待たせ。」

 ちっ!

 素早いわね・・・。

 ”ちって何ですかぁ?”

 ”あ、あら?聞こえた?”

 ”もう!あることないこと・・・。”

 ”あはあはあは・・・。”

 レイが涙目で睨んでる。迫力があると言うより、可愛い。

 あっ!

 ちょっと目を離した隙にシンジが先に帰っていく。全く油断ならないわ〜・・・と言いつつレイからも逃げる♪。

 「シンジー!

 「何?アスカ?」

 あたしの声でシンジが戻ってくる。

 「こっちこっち。」

 何があるか知らないけど、とりあえずヒカリとは逆の方向に連れて行かないとね。

 ・・・あっ!

 いいのあるじゃないっ!

 「あれやって!」

 あたしは射的を指差してその方向にシンジを押した。シンジはあたしに逆らうことなく受付に行ってくれた。なんか、ちょっといい気分。

 銃を構えるシンジの隣に陣取る。

 「あたし、あのペンギン欲しい!」

 あたしが選んだのは”岩跳びペンギン”のぬいぐるみ。

 まぁ、何でも良いんだけど、とりあえず難しそうなのを選んでみた。

 取れなくても、あたしのために頑張ってくれる、その姿が見たい。

 あたしはシンジに寄りかかるようにして弾の行方を、そしてシンジの表情を見守った。

 「碇君、私も欲しい・・・。」

 シンジの向こうに空色の髪が飛び込んできた。

 邪魔しないで・・・と、一瞬よぎる気持ちが恨めしい。

 「ちょっと、黙って・・・。集中できない・・・。」

 ぱしゅ!

 ・・・外れた。

 「ああっ!!もうっ!!馬鹿シンジっ!ちょっと貸しなさいよ!」

 あたしはわざと明るく振る舞って自分の気持ちを誤魔化した。

 「あ、なんだよ!惜しかったじゃないか、今の!」

 シンジはあたしに銃を渡すまい、として、良く狙いもしないで次の弾を撃った。ぽこぺん、と軽薄な音がして、ペンギンじゃなくて隣の何かに当たる。

 あれ?

 何に当たったのか判らないってことは、取れたのかしら?

 でも、あたしは”もの”が欲しいんじゃなくて、あんたの頑張ってる顔が見たいんだってばっ!

 この、馬〜鹿シンジっ!鈍いにもほどがあるわよっ!!

 「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!

 あたしは怒りに任せてシンジをぽかすか叩いた。



<続き>


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