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| Third step | |
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「あの、アスカ・・・。」
あたしはその声でびくっと飛び上がった。
一番顔を会わせたくない人間・・・。
「何よ。馬鹿シンジ・・・。」
あ、あたしより点数良かったからもう馬鹿って言ったら怒っちゃうかもねぇ・・・。
「あ、あのさぁ。今日、調理部の活動再開だから、試験の打ち上げにしようかって話になってるんだけど、アスカも来ない?」
前言撤回!
シンジ、いい奴ぅ〜。
「アスカさんの追試、終わるの何時ですか?」
・・・。
「シンジ、ちょっとこれ持ってて。」
あたしは手に持っていた荷物をシンジに預けるとレイの首に肩をかけてしっかり捕まえた。
「い、痛いです〜・・・。」
「あんたね。他人に喋ったらひどいわよ?」
レイの細い首も絞まるほど近くまで抱き寄せて、耳元で”4時過ぎ”って小さい声で教える。
「えっ?最後まで?」
「ばっ、し、しーーーーっ!!」
シンジに聞こえちゃうじゃないのっっ!
「ご、ごめんなさい・・・。」
レイは涙目になって謝った。
「あれ?アスカ、9科目追試?」
がーーーーん・・・。
な、なんで判ったんだろ・・・?
って、シンジ?
「なんであんたがそれ持ってんのよっ!」
「え、え?アスカがさっき僕に渡したんじゃないかぁ・・・。」
そんな声は無視してシンジから荷物と試験の時間割を奪い取る。
「あんたも誰かにばらしたらひどいわよ?」
脅しをかけてその場を離れる。
あたしはシンジが「うん。ばらしたら、確かに、ひどいかもね。」と呟いていたのを知らなかった。シンジにはそれが脅しだと気がつかなかったみたい。
・・・前言再撤回。
やっぱり、「馬鹿シンジ」でいいわ。
「全く何なのよっ!!あの問題、さっぱり判んないじゃ無いのっ!!!」
あ〜終わった終わった。
気分が良くなったあたしの口からは、もう自分でも止められないほどぺらぺらと文句が出ていた。
「だってさぁ?”これはペンですか?””いいえ、机です”・・・って、そんなこと聞くなって言うのよ?見れば判るでしょ?一体どこのどいつがペンと机を間違うのよ??頭おかしいんじゃないの?」
追試の問題がかなり簡単だったのがちょっと物足りないけど、これで落第しなくて済みそう。
・・・ってなると、またいつ帰るのかっていう問題が出てくるけど、まぁ深く考えなくても良いわ。”力不足で逃げ帰る”っていう状態だけは回避できたわけだし・・・。
それに、気分はあんまり良くないけど、確かにミサトの教科の分やらなくて済んだのは助かったわ。
あたしの考えとは違うけど、でも、まぁ、今回限りってことで、”お情け”受けといてあげる。
「大学出の蒼龍でも解けん問題、わしらに解けっちゅうのが間違うとる!!」
す、ず、は、らぁっ!
「馬鹿トウジっ!あんたらと一緒にしないでよ!!あたしは問題になんて書いてあるか読めなかっただけよっ!!」
それに、解いた問題だって結局違うものだったんだし・・・。
・・・あれ?
まさか・・・。
先生方が英語で問題作るの大変だからって、辞書とか調べなくてもいい、簡単な単語ばっかり使える問題に変更したってことはないわよね・・・?
・・・あ、あり得る・・・。
あたしは手に持っていたサンドイッチを無理矢理頬張ると、鈴原からジュースを奪い取って一気に飲み干した。悪い想像と一緒に・・・。
「ああっ腹立つっ!!もうっ!馬鹿シンジっ!!こんな暑苦しいとこにいないでどっか連れてきなさいよっ!!!」
こういう時はシンジに八つ当たりするのが一番っ♪
「お祭は今日じゃないしなぁ・・・。」
お!?
ほ〜ら。
やっぱりシンジよねぇ・・・。
「お祭?お祭いつやるの?」
あたしは嬉しくなってシンジの顔を見た。
「来週の末だよ・・・。」
・・・。
だめじゃん。
「あたしは”今日”やりたいの!何とかしなさいよ、このぶぁかしんじっ!。」
あたしは頬を膨らませて足をばたばたさせた。
お祭りをいつやるか、なんてシンジが決める訳じゃないから、そんなことしたからと言ってお祭りが早まる訳じゃないことくらい百も承知。
でもさぁ、なんか、無理を言ってみたくなるのよ。
ふと、シンジがレイを見た。
その困ったような視線を受けたレイが思案顔を作る。それから、静かに口を開く。
「・・・花火なら、ここで出来るわ・・・。」
それを聞いたシンジが急に嬉しそうな顔を作る。
「そうだよ、そうしよう!ね、アスカ?花火しよう・・・。」
・・・なんか・・・。
あたし、邪魔、かな?
「い、いいわよ。そうと決まったら、買い出し買い出しっ!」
あたしは胸の奥に湧いた寂しさを押し潰すように立ち上がった。
「やっぱり花火は打ち上げに限るわよ・・・。」
あたしはぽんぽんと音が出るような花火と、打ち上げ系の花火に見えるものを中心にシンジの籠の中に放り込んだ。
「あ、アスカ・・・。・・・しちゃう・・・買っちゃだめだよ。」
ん〜?
なんか言ってるみたいだけど、聞こえないからいいわ。
日本の花火技術って世界のトップクラスだと思うのに、どうしてこう、もっとアピールしないのかしらねぇ?
店のBGMが少し低くなった瞬間。
「仲いいわよねぇ?」
そう言うヒカリの声が耳に届いた。
あたしと、シンジ?
そう見えるのかしら?
「幼馴染やのうて許嫁ちゃうん?」
「あるある。」
鈴原と相田のからかう声が耳に響く。
こいつらはわざと聞こえるように言ってるわ。
「聞こえてるわよっ!」
あたしは振り向きざまに鈴原の向こう脛を蹴ってやった。
「あんたらねぇ!」
げしっという音を残して、鈴原が脛を押さえてうずくまる。
不意打ちだったので相当痛かったみたい。
だけど、あたしに聞こえるってことは、レイにも聞こえるってことでしょう?
あたしの想像通り、レイの顔には無理に作った笑顔が貼り付いていた。
「ちょ、ちょっとアスカ・・・。」
ヒカリが慌ててあたしと鈴原の間に入ってきた。
あ・・・。
「ご、ごめん。つい・・・。」
「あんまり苛めないで・・・。お願いだから・・・。」
ちらっと横目を使うと、案の定幸せそうに二人で花火を選んでいる姿が目に入る。
良かった・・・。
「痛いやないけぇっ!」
鈴原が訳の判らない言葉を使った。
「あんたが馬鹿なこと言ったからじゃないのっ!ちょっとは周りの迷惑も考えなさいよっ!!」
「おま〜の声の方が迷惑やっ!」
なんだか鈴原がますます訳の判らない言葉を使いだしたわ?
「わ、わけわかんない言葉使わないでよねっ!?この馬鹿トウジっ!」
「馬鹿馬鹿言うなやっこのあほっ!」
「あの、お客様・・・。」
店員らしき人が困ったような顔でこっちを見ている。
「他のお客様のご迷惑になりますのでもう少々お静かに願えますか?」
・・・は、はい〜・・・。
「校庭でやろう。広いし・・・。」
シンジがそう言っている。
みんなは賛成。
でも、あたしにはちょっと考えがあるのよね〜。
さっきいいもの見つけたんだ。
空き瓶。
むか〜しのコ○ラの瓶。
これって、”撃つ”のに最適って知ってた?
「あたし、これね。」
ぱっとロケット花火を数本掴み取って走る。
背中に鈴原の
「あ、蒼龍!ずるいぞ!」
と、いう声を聞きながら、
「うっさいわねぇ・・・。」
の一言を放り投げる。
うふふ。
このロケット花火の長さと、○ーラ瓶の長さがまたちょうどいいのよ。導火線がいいところに来るから狙いを定めやすいのよね・・・。
シンジはレイと一緒に昇降口から出てくる。
・・・なんか、妬けるから間狙って撃っちゃお〜♪
しゅぅぅぅうううぴゅうぅぅぅっ!
狙いは違わず二人のちょうど中間を突き抜けていく。
「あーっ!!よけるな!!馬鹿シンジっ!!!!」
な〜んてねっ!
言うだけよ、言うだけ。
本当は人に向けて撃ったら駄目なのよ。
・・・あたし?
あたしはいいのよ。
それに、ちゃんと”二人の間”狙ったし・・・。
「アスカぁ・・・。まだ始めちゃだめだってば。」
あっ。
廊下であたしの花火拾った人がいる・・・。
あれは・・・確か、日向先生だわっ!
「こらっ!!!」
「誰?花火なんかしてるの?」
「学校で花火をするなんてけしからんな。」
日向先生がロケット花火の芯をぴらぴらさせながら文句を言ってる。
それ、あたしのよ?
返さなくても良いけど、あたしを叱ってよ?
シンジとかレイを叱ったら、許さないわ・・・。
って・・・。
あれ?
伊吹先生、足下がふらふらして・・・あーーーっちょ、ちょっと、シンジに抱きつかないでよおおっ!!
ぽんっぽんっ!ぽんっぽんっ!!
やっぱり花火はこれよねぇ・・・。
先生達の乱入で予算が大幅に増えて、花火の数も種類も豊富になった。
レイは向こうでしんみりと線香花火しているけど、あたしはやっぱりこれだな。
なんか、こう、花火してるぞっ!って感じになるわよねぇ?
それにしても、この技術・・・。
多分マグネシウムとか鉄粉とかを丁寧に並べているんだろうけど、いや〜なかなかヨーロッパではお目にかかれないわ。
「やっぱ、花火はこれよこれ!」
口に出して言ってみる。
ヒカリも頷いてくれた。
「そうよね。ね、鈴原、火つけてくれない?」
・・・なぁんだ。
鈴原の所に行きたかっただけかぁ・・・。
そりゃそうよねぇ・・・。
あたしはまるで子供のようになっている先生達を見やった。
伊吹先生と日向先生、青葉先生は手持ち花火で字を書いて遊んでいるみたいだし、その様子を後ろで眺めている赤城先生にしたって、子供のような無邪気な表情になってる。
加持先生とミサトは二人並んでビールを飲んでいる。
小難しい顔をして、さっきからずっっっと真剣に話し込んでいるけど、それって気の合う同士じゃないと出来ないこと。この二人、くっついちゃうかもしれないわねぇ・・・。
さぁて、もう一つのカップルの様子はどうかな?
あたしが首を回してシンジの方を見ると、意外にもなんだか悲しそうな顔をしているレイと一緒に途方に暮れていた。
「なに辛気くさい顔してんのよっ!!」
馬鹿じゃないの?
こういう時こそお互いの気持ちを確かめるんじゃないの・・・。
<続き>
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