転校生 Special Edition←戻る
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 Second step




 あたしは仕方なくヒカリに話を合わせた。

 「いきなりロッテだもんね?」

 警告っ!ってね。

 ・・・あれ?

 そうか・・・ドイツ語判らないのか・・・。

 「あ、ごめん。」

 えーと、ロッテがレッドだから赤、ね。んで、えーと、ゲルペがイエローだから、黄色か・・・。

 「だから、いきなりレッドカルテはないじゃんね?イエローが最初で・・・。」

 あれぇ?

 二人ともきょとんとしてる???

 「なぁに?あんたら、フスバル・・・じゃなくて、んーと、なに!?もうっ!!

 フス・・・がフットでバルがボールで・・・足玉?

 いくらなんでも足玉はないなぁ・・・???

 「だから、フットボール、見ないの??」

 首を振るレイ。

 でも、ヒカリはまたおかしなことを言いだした。

 「サッカー?」

 ちょーっと、何でそこでサッカーなのよ??

 「え?日本はサッカーなの?・・・アメリカばっかりだと思ったら・・・何でここだけイギリスなの???・・・んもぅっ!!なんで英語なら英語使わないのよっ!!」

 サッカーで通じたのかぁ。日本はアメリカ英語しか使わないなんて教えたの誰よ?

 「んまぁ、とにかく、あれはあんたが悪いんじゃないから。」

 あたしはレイの頭を叩いた。

 それからまたヒカリと他愛もない話をしながら歩いた。

 でも、なんだかヒカリが上の空だ。

 なんであたしの話を聞かないのよ?

 って思っていたら、急にヒカリが後ろを振り向いた。

 「あ、その・・・綾波さん・・・。もしかして、今日、都合、悪かった?」

 「えぇ。」

 あ、そう言われてみれば、全然話してなかったわよね。

 「そう?じゃ、良いわよ、先帰ってて。」

 いきなりだったもんね。

 ヒカリの話はだいたい分かったからあんたには後であたしが伝えればいいわ。

 「遅くなっちゃったもんね。うちも門限あるから・・・判るわ。」

 ヒカリはレイの家の事情を見越したように話を続けた。

 「アスカ、門限は?」

 門限どころか、それを決める人さえいないわ。

 「んなもん、無い無い!じゃ、また明日ねぇ!」

 からんからん・・・。

 あたしはヒカリの先に立って店に入った。

 「綾波さん、またね!」

 ヒカリが後からついてくる。その向こうで、寂しそうにしながらこっちに手を振っているレイが印象的だった。



 「コーヒー二つね。」

 ヒカリが勝手に注文を取る。

 ま、いいけど・・・。

 「で?あたしに何しろっていうのよ?」

 「あ、ま、ま、それは、その・・・注文届いてから、ゆっくり・・・。」

 用件済ませてから飲んだ方が落ち着くんじゃないの?

 ・・・まぁ、いいけどさ・・・。

 注文したものが来るまでの短い間、あたし達は他愛もない話で間をつないだ。

 「で?」

 「・・・い、いきなりぃ?」

 呆れるのはあたしの方よ。用件をぱっぱと済ませた方が安心して他の話が出来るってもんでしょう?

 「あ、あのね。アスカに鈴原の勉強を見て欲しいの。」

 「断るわ。」

 考えるまでもない。

 「ど、どうして?」

 「あのねぇ、それこそあんたが一緒に勉強すれば済むことでしょう?ちょうど良い機会じゃないの?」

 あーあ、なんだか疲れる。

 当てられるっていうの?こういうの?

 顔真っ赤にしているヒカリが可愛いやら情けないやら、・・・羨ましいやら・・・。

 「だ、だ、だめよ・・・。うち、ほら、厳しいから・・・。」

 「そんなの、気になるの?だったら、やめたらいいわよ?自分の気持ちより、体面が優先できるんだったら、所詮その程度よ。」

 あたしは素っ気ない風を装ってそう言った。

 その言葉は、自分に向けたもの。

 そう、私のシンジに対する気持ちも、その程度。

 体面を優先出来てしまっている今の気持ち、大したこと無い。

 「・・・そうよね。うん。そう。」

 ヒカリはそんなことを呟いていた。

 「ありがと、アスカ。あたし、頑張って説得してみるよ。」

 「そうしたらいいわ。いざとなったら、”委員長なのでクラスの平均点が上がるように頼まれた”とかなんとか言えば良いんだから。」

 「あ、それいいっ!

 「その代わり、最初からそんなこと言ったらもう二度と助けてあげないからね?」

 あたしがそう言うとヒカリはてへっと舌を出した。

 やっぱり、これ幸い、って使うつもりだったわね・・・。



 「それでは、試験問題を配ります。時間が来るまで裏返しては行けません。解答用紙に自分の名前を書いて、鉛筆を置いてください。」

 ・・・。

 な、なんか、本格的ね?

 ずっとこんなんだっけ?

 小学校の時のテストって、こんなじゃなかった気がするんだけど・・・?

 「いいですか?では、始めっ!」

 がさぁっ!かりかりかりかりかりかりっ!!!

 な、な、な、何よそれぇっ??

 ・・・まるで機械みたい。

 い、いけないっ集中しないと・・・。

 えーと?

 【次ぎの□の中に当てはまる四字@語を答えなさい。】

 読めない文字飛ばしてもだいたい判るわ。

 漢字を書けばいいのよね、きっと。

 えーと?

 1.四□□歌→四中校歌(ここが第一中学校だから、多分第四中学校の校歌だわ。)

 2.□口同□→コ口同回(なんだか判らないけど・・・?四角の数と向き?)

 3.本末□□→本末未夫(横棒が段々上がっているのに気がつかないとでも思ったの?)

 4.危□一□→危な一い(あぶなーいって言ってる?)

 5.一□千□→一十千万(一本ずつ線を増やして数も増やすってことかしらね?)

 ・・・2,4にカナが入ってしまったけど、多分大丈夫だわ。後は残りもこの調子で・・・。

 ・・・。

 「はい、それまで。」

 うー・・・。

 時間が来てしまった。

 まぁ、全部埋めてあるから0点ってことはないわね。

 次は英語?

 頑張らないと・・・。

 【次の問に答えなさい。絵を見て問答を完成させなさい。】

 なんか・・・さっきと問題の出し方が違うわね?

 1.Is this a pen ?

 ・・・は?

 あたしは目を疑った。

 そこには机の絵が描いてある。

 どう見たってこれがペンには見えない。

 1.Is this a pen ? → Are you kidding? Otherwise you must be crasy! Come and see it yourself!!(冗談言ってんの?じゃなかったらあんた頭おかしいわよ!ここ来て自分で見たらいいわっ!!)

 なんかはみ出しちゃったわ。

 2.What is his name ? → He is called Ken. Can you see his name plate?

 これは簡単。名札があるもの。

 3.Whose pen is this ? → I don't know. It's not mine.

 私のじゃないわ。ケンのかもしれないけど、特定できないもの。

 ・・・。

 まぁ、英語は楽だったわ。

 ちょっとびっくりさせられたけど・・・。

 次は・・・社会?

 【次の問に答えなさい。】

 1.明治@新で政@を@ったのは何@か?四つ答えよ。

 ・・・?

 え?

 は?

 何言ってんの?

 ちゃ、ちゃんとした日本語使ってよ?

 な、なんだったら、ドイツ語でも良いわよ?

 せ、せめて英語で聞いて〜〜・・・・・・。



 「アスカぁ、どうだった?」

 シンジが疲れた声を出している。

 あ、あたしっ?

 「ふふっ!あんたたち、あたしが如何に天才少女か見せてあげるわよっ!!

 こ、このくらい言っておかないとね・・・。

 「そうだよねぇ・・・。はぁ、母さんに何て言うかな・・・。」

 シンジはため息をついて肩を落としている。

 レイはその様子を見て何か言いたそうにしている。

 「何?優等生?言いたいことあったら言った方がいいわよ?」

 あたしは先手を取って話しかけた。

 「そ・・・その、碇君は大丈夫、だと、思う、から・・・。」

 「そんな言い方されても大丈夫なんて思えないでしょう?」

 なんか、試験の後って妙にいらいらするわよねぇ?

 「そ、そうです・・・ね・・・。」

 むかむかむかっ!

 「あたし今日は先に帰るわよ?」

 鞄を手にして立ち上がる。

 「あ、はい。さよなら・・・。」

 レイはこくっと頭を振った。

 「アスカ、試験の結果は次の授業の時に出るからね。」

 こ、こいつは・・・。

 「余っ計なこと言わなくて良いわよっ!

 こっちは一刻も早く忘れたいのよ〜・・・。



 「アスカ、ちょっと・・・。」

 ミサトが小さい声で手招きをした。だいたい判ってるわよ・・・。言いたいことなんて・・・。

 テストが返されるとあたしは点数も見ないでくしゃっと丸めて鞄に詰め込んでいた。

 ちらっと目に入る桁が2桁になることすらなかった。

 英語を除いては・・・。

 このまま・・・もし、落第になったら、どうしよう・・・。

 それでも、いいか・・・。

 もともと、夏休みの間だけ、っていう話だったし・・・。

 まぁ、よくやった、ってことで・・・でも、折角友達も出来たのに・・・。

 「あのさぁ?ごめん。悪かったわ。」

 え?

 あたしは耳を疑った。

 どうしてミサトが謝る必要があるのか判らない。

 「アスカ、日本語の方がお留守だったもんねぇ・・・。問題読めなかったんじゃないの?」

 ミサトは優しい目つきであたしの方を見ている。

 あたしは自然に頷いていた。

 「今からじゃ追試の決定は変わらないんだけど、先生方に英語で問題作ってくれるように掛けあってるから。あ、それと、小学校の先生している友達がいるからね。聞いてみたのよ。そしたら、没になった教科書で良かったら、って言ってくれてね。」

 はい、とミサトが渡したのは小学校の教科書の数々。

 「ふりがなふってあってちょっと見づらいけど、アスカなら大丈夫よね?あ、それと、あたしの配慮が足りなかったんだから、社会は名前書くだけでも合格にしてあげるからね。」

 そ、そんな情けをかけられるような真似、出来ないわっ!

 あたしはきっとミサトを睨んだ。

 「あ、言い方悪かった?ごめん。そう言うつもりじゃないのよ。9科目も追試じゃ大変でしょう?いくら英語で書いてあっても・・・。だから、少しでも負担を軽く、って言う意味よ。」

 そ、それでも、納得・・・できない・・・。

 「あ〜、それから、”社会”の勉強だからね。社会を渡っていくための常識も教えないといけないのよ〜・・・。」

 ミサトはそんなことを言った後あたしの耳をぐっと引っ張った。

 「い、痛っ・・・。」

 「たまには素直に人の好意を受けなさい。その分、他のことでお返しする機会が必ずあるから。その時にあなたができることをすればいいの。判った?」

 かなり強い口調で諭される。

 あたしは耳を押さえてとりあえず頷いておいた。

 ・・・だけど、この時のミサトの言葉が自分のものになるまでに、これから相当の時間がかかるということを、あたしは知らなかった。



<続き>


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