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| by Ophanim | |
| Final step | |
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かぽーん・・・。
「いいお湯ねぇ・・・。」
アスカさんが湯船から声をかけてくる。
「は、はい・・・。」
私は石鹸を使いながら背中越しに返事をした。
「なぁに緊張してるのよ?」
ざばーっと音がしたかと思うと、アスカさんがぐにゅっと抱きしめて来た。
はうー・・・。
「背中流してあげる。」
私が返事する前にアスカさんはスポンジを手にとって、ボディソープをスポンジに染み込ませていた。
ごしごしごしごし・・・。
い、痛い・・・。
「ん?あれ?紅くなってきたわよ?肌弱いんじゃない?」
「ち、力入れ過ぎですよぉ・・・。」
ひりひりするぅ・・・。
「それが肌弱いって言うんじゃないの?」
「・・・違うと思います。」
私はタオルで体を隠しながらアスカさんと席を替わった。
「何?」
「今度は私が流します。」
こしこしとアスカさんの背中を磨いていく。
「全然力入ってないぃ!」
アスカさんは足をばたばたさせて文句を言った。
「こ、このくらいで充分なんですっ!」
お風呂は声が響くので私もつい大声になる。
「レイ、髪も洗ってぇ。」
アスカさんは泡だらけの背中を私にくっつけて来た。
「ああっ!泡がつくぅ!・・・わぁ・・・。」
折角洗ったのにぃ・・・。
「また流せば良いじゃん?」
もう・・・。
「じゃ、髪洗うから目閉じてて下さいね。」
「え?本当に洗ってくれるの?」
アスカさんは嬉しそう。
しゃわしゃわ、と音を立てるようにしてアスカさんの髪を洗う。
「レイって上手よね・・・。」
「そうですか?」
調子に乗って、アスカさんの髪の先まで洗ってあげる。
「美容師になれるわよ。気持ち良いもん。」
「はぁ・・・。」
私は実感が湧かなくて、生返事をした。
「何よ?嬉しくないの?美容院とか行くでしょ?」
そう言われても・・・。
「ご、ごめんなさい。私、美容院とか、行ったこと無いですから・・・。」
私の言葉に驚いたアスカさんは思わず目を開けてしまったみたい。
「い、痛い痛い痛いっ!!」
「だ、大丈夫ですかっ??」
シャンプーが目に入ったアスカさんがひとしきり苦しんだ後、”お返しにレイの髪も洗ってあげるわ”というとっても意味の深いお誘いを戴いた。
断り切れ無かった私は、髪を洗ってもらっている間中、何とか私の目を開けさせようとするアスカさんからくすぐられたり悪戯されたりして、目を開けないようにするのにとても苦労した。
それでも。
「楽しかった?」
湯上りの私にお母さんが私が何も言わなくてもそう聞いてくるほど、楽しい時間だった。
「お布団が良いですか?ベッドがいいですか?」
私はアスカさんに寝る場所を尋ねた。
私の部屋には自分のベッドがあるんだけど、今日はアスカさんがいるので床にお布団を敷いてもらったの。
「んー。でも、これってあんたのベッドでしょ?あたしは布団で良いわ。」
アスカさんはそう言うとごろんと横になった。
「パジャマはいいんですか?」
私は慌てて箪笥から二人分のパジャマを取り出した。ついでに下着も・・・。
「あんたのじゃ小さいかもよ?」
アスカさんはにやっと笑った。
もう・・・。
さっきお風呂で見られているから今更隠しても仕方ないけど・・・。
「お母さんの借りてくる・・・。」
「あ、冗談冗談。人の借りる気にならないからいいのよ。明日帰ったらすぐに交換するから気にしないで。」
アスカさんはパジャマだけを受け取るとぱっぱと着替えだした。
私もつられるようにいそいそと着替える。
「おやすみなさい」「おやすみ」
かしゃ。
部屋の電灯を全て消すスイッチを操作して、私達は寝床についた。
「ねぇ。」
アスカさんだ。
「おやすみなさいしたら、起きてたらいけないんですぅ。」
私は暗くて見えないだろうけど、ぷくっと頬を膨らませてアスカさんに文句を言った。
「あんた馬鹿ぁ?起きてる間に話したら”お泊まり会”の意味ないじゃない?」
・・・。
そう言われれば、そんな気もする・・・。
私達はベッドの上と下で色々な話をして盛り上がった。
こんなに楽しく人と話すのは何年ぶりだろ?
アスカさん、ありがとう・・・。
「ね、今日、楽しかった?」
「えぇ。とっても。」
私も素直に返事を返す。
「シンジと一緒にいられたから?」
ぽっ!
身体中の血液が音を立てて沸騰していく。
「そ、そんな、ことないです・・・。」
「またまたぁ、そんなこと言っちゃって・・・。」
どすん。
お、重いぃ・・・。
アスカさんが私のベッドに(というよりも、私のお腹に)昇って来た。
「正直に言いなさいよぉ。」
ごろごろごろ・・・。
私は寝返りを打つふりをして壁際に逃げた。
「入っちゃえ。」
あ・・・。
アスカさんは私がいなくなった隙にベッドの真中に横になった。
「シンジ、いい奴だよ。」
ぼそっとアスカさんが呟いた。
え?
アスカさんの方を見ると、アスカさんの後ろ頭が薄ぼんやりと見えた。
向こう向きになっている。
私はそっとアスカさんの背中に手をおいた。
「頑張ってね。」
声が震えている。
何のことだか判らないけど・・・。
アスカさんには辛いことみたい。
「あ、あの。私、大丈夫です。だから、私に出来ることがあったら・・・。」
「おやすみを言ったら、眠るものよ。」
アスカさんは振り向かないで答えた。
私は黙ってアスカさんに背中を向けた。
そして・・・。
そのままの姿勢で背中をアスカさんの背中に押しつけた。
「今日は、とても楽しかったです。」
アスカさんから返事は返って来ない。
「私、この後何があってもアスカさんといい友達でいたいです。」
ぴくりとも動かないアスカさん。
呼吸も、していない。
「だから、また遊びに来て下さい。大歓迎です。」
ふぅっと大きなため息が聞こえて来た。
「あんた・・・。」
アスカさんが呟いた。
「はい?」
「あんた、馬鹿。」
アスカさんは小さく、それだけを言った。
「そうかもしれません。」
私は小さく笑った。
次の朝。
アスカさんは私よりも先に目を覚ましたのか、それとも私が先に寝てから寝直したのか、私が起きた時には布団で寝ていた。
「おはようございます。」
薄目を開けたアスカさんにご挨拶。
「おやすみなさい。」
ごろん、とまた寝返りを打つアスカさん。
「起きましょうよぉ・・・。」
かしゃーっとカーテンを開けてみて・・・。
ぴしゃーっと締めた。
「ア、アスカさん!寝相悪いぃ・・・。」
アスカさんは”どうやったら寝ながらこんなに脱げるの?”っていうくらいパジャマをはだけていた。
「んー?」
「起きましょう、アスカさん。お腹空いたんじゃないです?」
「んー・・・。」
私は寝ぼけているアスカさんを起こして服を着替えさせたりした。
それからアスカさんを押すようにして洗面所へ・・・。
・・・し、失礼かもしれないけど・・・。
アスカさん、重いぃ・・・。
あ、お母さんだ。
「おはようございます。」
アスカさんが元気にご挨拶。
「あら、おはよう。」
お母さんも笑顔で返事してお台所へ・・・。
?
あら?
え?アスカさん、起きてるの?
「アスカさん、起きてたの?」
「あちゃ。ばれたか・・・。」
んもうっ!
「じゃ、ぱぱっと顔でも洗ってきますかね?」
うー・・・。
私はアスカさんに遊ばれているみたい。
アスカさんはお母さんが作ってくれた朝御飯を軽く平らげて帰って行った。浴衣はアスカさんの体型に合わせるようにもう一回直すので置いて行く。
「さて、レイ、ちょっとこっち来なさい。」
お母さんが私を呼んでいる。
え?
「なぁに?お母さん。」
私はアスカさんが使ったお皿を洗い場に運んでいる最中だったので、洗い場にお皿を置いてからお母さんのところに行った。
・・・。
あ・・・。
逃げよう・・・。
「どこ行くの!?」
だ、だって、そんな嬉しそうなにやにやした顔・・・。
絶対何か企んでるもん!
「なーんにもしないからおいで。レイちゃーん。」
怪しい・・・。
怪しすぎる・・・。
でも、仕方ない。
私はいつでもその場を離れられるようにソファの端っこにちょっとだけ腰を下ろした。
「あのさぁ?昨日の男の子・・・ってこら、どこ行くの!?」
あぁん・・・やっぱりそういう話だぁ・・・。
「だ、だ、誰って、そ、そ、そんな・・・。」
わたわたわた・・・。
「誰もそんなこと聞いてないでしょ?」
お母さんは私の手を引っ張って無理矢理ソファに座らせた。
「だ、だ、だから、ま、まだ何も無いですっ!本当っ!て、て、手もつないでないですぅ・・・。」
あれ?
手を握ったことってあったかしら?
あーっ!もうっ!
何も考えられないよぉ・・・。
「だーかーらっ!!誰もそんなこと聞いてないっていうのに・・・。」
はぅ・・・。
「お願い・・・。お母さん、見逃して・・・。」
碇君に会っちゃだめって言われたら、私、もうだめかも・・・。
「はぁ?何の話よ?あのね、あの男の子、“碇”君って言わなかった?」
???
「う、うん。碇君は碇君だよ。」
どうしたんだろう?
お母さん、嬉しそう・・・。
「もしかして、彼のお母さん、ユイって言わない?」
・・・?
えーと・・・。
確か、アスカさんが・・・。
“ユイ叔母様、あたし達、ちょっと行くところがあるんです”
「あ、そうだと思う。」
私がそう言うとお母さんはとても嬉しそうに笑った。
「じゃ、彼の電話番号なんか聞いてるわよね?」
・・・。
「そんなの、私が知りたいくらいよ。」
唇を尖らせる私に負けないくらい、お母さんも頬を膨らませて不満そうだ。
「しょうがない子ねぇ・・・。電話番号くらい聞いておきなさいよ。」
そんなこと言ったって・・・。
「仕方ないわ。あなたの学校に電話して聞くから、学校の電話番号教えなさい。」
・・・。
「私にも碇君の電話番号教えてくれる?」
生徒手帳を探しながら、念の為に聞いてみる。
「教えてあげるわよ。私とユイって親戚なのよ?」
ちょっと遠いけどね。
そう言いながら、私から生徒手帳を奪い取る。
へぇ・・・。
って、じゃあ、私と碇君も親戚なの?
初めて知った。
あ、だからユイおばさん、お母さんに似てるのかぁ・・・。
なぁんか納得。
「あ、すみません。綾波と申します。いつもお世話様です。あの、同じクラスの碇君のお母様・・あ、はい、そうです。電話番号を教えていただけますか?」
お母さんは本当に嬉しそうに話をしている。
仲が良かったのね。
「もしもし。碇さんのお宅でしょうか?碇ユイさんはいらっしゃいます?あ、ユイ?ユイなの?私。判る?チトセ。うん、そう。廣瀬チトセ。今は綾波だけどね・・・。あ、判る?そうなの、娘がね。同じクラスなのよ。あんたのとこの息子と。あ、そうそう。そのシンジ君よ。」
お母さんは私がいるのも忘れているかのように話に熱中している。
「今度会いましょうよ。今仕事は?あははははは。私もよ。なぁんだ、同じようなことしてるわね。そうなのよぉ。手のかかる娘でね。」
むぅ・・・。
「あ、でも、それじゃいつでも会えるじゃない?今日は無理?うーん、そうね。あ、でも、午後からなら・・・。って、あんた、どこ住んでるのよ?・・・。へぇ・・・。近いじゃないの?私の家?えーとね、○○○の●●●だわ。ね、近いでしょ?」
あのー・・もしもし、お母様?
「じゃあ、後でね。ばいばぁい。」
ちん!
あうー・・・。
お母さん、番号は?
「じゃ、レイ、私、午後から出かけるから。今日の晩御飯はあなた作っておいて頂戴。お願いね。」
私は生徒手帳を開いてお母さんに差し出した。
「何よ?」
「電話番号頂戴よぉ・・・。」
お母さんに詰め寄る。
「あぁはいはい。これね。じゃ、晩御飯作るのよ?」
まぁ、いいわ。
これで碇君の電話番号も手に入ったことだしぃ。
今度電話しちゃおうかな?
私は楽しそうに服を選ぶお母さんを横目で見ながら、まるで天まで昇りそうな私の気持ちそのままに階段を駆け上がった。
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