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 Ninth step



 「どうして今日はお祭が多いんだろう・・・。」

 碇君がそんなことを言ってる。

 「あんたばかぁ!?そんなの、わっかるわけないじゃん!!」

 アスカさんは楽しそうだ。右手で相田君を引きずるようにして歩いている。

 「今日は七夕のお祭・・・。牽牛と織り姫の会える、一年に一度の、大切な日・・・。かささぎのかける橋を渡って、一年分の思いをかなえるの・・・。」

 天文部なんだからぁ。

 「てっつがくぅ!

 ・・・アスカさぁん、アスカさんも天文部なんだよぉ?

 「そ、その、鈴原。い、今まで通りで、いいから。と、友達・・・。」

 ヒカリさんのおずおずとした申し出。

 今日の雰囲気からしたら、きっといい返事があると思うわよ、ヒカリさん。

 「んなこというたら、怒るで!!

 え?

 ・・・そ、そんな・・・。

 ご、ごめんなさい、もしかしたら、逆効果だったのかもしれない・・・。

 「わいといいんちょが友達やって、・・・当たり前のこといわんといてや!」

 ・・・。

 あぁ・・・。

 良かった・・・。

 「・・・あ、ありがとう・・・。」

 ヒカリさんは指先で鈴原君の浴衣の袖を摘んだ。

 危なっかしいくらい、小さく握っているけど、鈴原君はそれが外れないように気を遣いながら歩いている。

 こういうのも、いいなぁ・・・。

 良かったね、ヒカリさん。

 「ふむふむ、トウジ、らぶらぶ、と・・・。」

 わぁっ!

 驚いたぁ・・・。

 いつのまにか相田君が、手帳になんかメモしてるぅ・・・。

 「・・・あーいーだぁーっっ!!!!!

 アスカさんはぺちぺちと相田君を叩いている。

 「けんすけぇー・・・・。」

 碇君もぽこぽこ叩いてる。

 でも、さっきのような雰囲気じゃない。

 どっちかと言うと、照れ隠し・・・。

 「それじゃ、あたし達、こっちだから。」

 アスカさんはぐいって相田君を引っ張った。

 「え?」

 碇君が何か言おうとするのを止めたのは、相田君。

 「あの、鈴原君、ヒカリさんをお願いね。」

 私は二人に手を振った。

 ヒカリさんの家だけは私達の家の方向と遠回りなの。

 鈴原君の家も、私達と同じ方向だから、鈴原君は遠回りだけど、いいよね?

 ヒカリさんは何度も何度も私達に頭を下げながら帰って行った。

 なんだか、肩の荷が降りた・・・。

 「じゃ、僕はここでね。」

 相田君が帰って行く・・・。

 残されたのは、私とアスカさんと・・・碇君。

 ヒカリさん達にあぁいうことがあった後なのでちょっと気まずい雰囲気・・・。

 「あ、あたしもここでいいわ。」

 え?

 「だ、だめぇ・・・。」

 私はアスカさんを引きとめた。

 「どうして?」

 アスカさんは不満そうに私を見た。

 「だ、だって、アスカさんのお洋服、私の家にあるもの・・・。」

 私の言葉に、アスカさんは、あ、って感じで口をあけた。

 どうしたんだろう?

 アスカさん、いつもよりも元気が無い。

 「じゃ、綾波の家まで送ったら、あとはどうしよう?」

 「碇君、アスカさんをまた送ってよ。」

 遠回りになるけど、仕方ないよね?

 「うー・・・じゃ、僕も一旦家に戻っていいかな?」

 「別に一人で帰れるわよ。」

 アスカさんは俯いたままぼそっと答えた。

 「そういうわけにはいかないよぉ・・・。」

 碇君は苦笑いしながら空を見上げた。

 「だって、あたしは大丈夫なんでしょ?」

 アスカさんはむっとしている。

 さっきのことだと思う。

 ”大丈夫!アスカがいる!!”

 あの後、アスカさん、怒ってた・・・。

 「なんのこと?」

 碇君はすっかり忘れているみたい・・・。

 「いいわよっ!別に無理して送ってもらわなくても・・・。」

 うわぁ・・・。

 「んー・・・アスカがいいって言うならいいけど・・・。」

 わ、わ、わ・・・。

 「ね、ね、碇君、アスカさんは女の子なんだから・・・。」

 私はさりげなく碇君に気づいてもらおうと頑張ってみた。

 「そうだね、アスカも女の子だからね・・・。」

 あーっ!

 「アスカ”も”って何よ!?」

 「だって、アスカ、強いじゃないか。そこらの男の子よりも・・・。」

 い、碇君ってばぁ・・・。

 のほほんとしてるんだから・・・。

 あ、私の家に着いちゃったよぉ・・・。

 どうしたらいいの?

 ・・・、そ、そうだ・・・。

 「あ、あ、アスカさん?良かったら、今日、私の家に泊まらない?」

 え?

 二人は不思議そうな顔をした。

 「ちょ、ちょっと、待ってて・・・。」

 私は二人が離れて行かないように目を配りながら玄関のチャイムを押した。

 「はい、綾波です。」

 「・・・私も綾波ですぅ・・・。」

 「・・・・・・馬鹿なこと言ってないで、入って来なさい。」

 お母さんはすっかり呆れている。

 「あのね、今、一緒にアスカさんもいるんだけど、今日、アスカさん泊まってもらってもいいかしら?」

 ・・・。

 「そうねぇ・・・ちょっと、あがってもらっていいかしら?」

 ふぅ・・・。

 「ちょ、ちょっと、レイ、勝手に決めないでよね?」

 そう言いながらアスカさんが私に詰めよって来たところに、お母さんが現れた。

 「あら、お祭り、楽しかった?」

 お母さんは私よりも先にアスカさんに向かって話しかけた。

 「あ、は、はい。勿論。」

 ぺこっと頭を下げるアスカさん。

 「えぇと・・・あなたは?」

 お母さんは碇君を見つけて首を傾げた。

 あ!

 い、碇君のこと、お母さんに教えて無かった・・・。

 「あ、僕綾波さんのクラスメートの碇シンジっていいます。今日は遅くなったので綾波さんを送ってきました。」

 碇君がにこにこしながら答えている。

 その間、私はお母さんからぎゅーっと腕を掴まれていた。

 「あらまぁ、それはどうも、うちの子がご迷惑をおかけしました。」

 ぐいっと頭を下げさせられる。

 「いえ、別に・・・。それじゃ、アスカ、綾波、僕はこの辺で帰るよ。」

 碇君は私達に手を振りながら帰って行った。

 「さて、アスカさん。あなたさえ良ければ私達は大歓迎なんだけど・・・。」

 お母さんは私の手を離さないでそう言った。

 「えーと・・・。あ、あたしは、構わないけど・・・。でも、ご迷惑なんじゃ?」

 「だから、大・歓・迎なの。泊まるかどうかは親御さんとも相談しないといけないからすぐに決めなくても良いわ。とりあえずあがるだけあがっていって。」

 お母さんはそう言うと、アスカさんの手を引いて家の中に招き入れた。

 「ちょっとゆっくりしててね。今からじゃろくなもの作れないけど、冷たいものくらいなら出せるから・・・。」

 私達を応接間のソファに座らせると、お母さんはそう言って立ちあがった。

 「あぁ、べ、別にお構いなく・・・。そ、それより、あ、あたし、家に電話・・・。」

 アスカさんは折角腰を下ろしたのに、慌てて立ちあがった。

 ゆっくりしてたらいいのに・・・。

 「あ、いいわよ。私からお断り入れておきますから・・・。」

 お母さんはゆっくり座っていて、と付け足した。

 「困るのっ!!

 途端にアスカさんは大声を出した。

 「???」

 私もお母さんも驚いてアスカさんを見る。

 「・・・そ、その・・・。う、うちは、厳しいから、連絡も自分で入れないと、後であたしが怒られますから・・・。」

 そういうこと?

 「あ、あら、そうでした?ごめんなさいね。そ、それじゃあ、電話、こっちに切り替えますからね・・・。」

 お母さんは応接間に電話を切り替えて、部屋を出て行った。

 「あ、あの、アスカさん・・・。」

 「電話するから、ちょっと向こう見てて・・・。」

 ???

 怒ったような困ったような視線を浴びせられた私は素直に後ろを見た。

 でも、どうして電話するところ見られるのが嫌なんだろう・・・?

 かちゃかちゃかちゃかちゃ、かちゃかちゃかちゃ、かちゃかちゃかちゃかちゃ・・・

 ・・・11桁?

 携帯電話・・・・・・じゃないような・・・?

 「あ、お母さん、今日、友達の家に泊まるから。それじゃ。」

 え?

 ちん、と音がして振り返ると、アスカさんが受話器を置いたところだった。

 「あ、あの、アスカさんの家って、厳しいんじゃ無かったんですか?」

 私はおそるおそるアスカさんに聞いて見た。

 「厳しいわよ?だから電話したじゃん。」

 アスカさんはぐっと足を組み直して答えた。

 ソファに寄りかかって、とてもリラックスしているみたい・・・。

 「き、厳しい割には、あっさり外泊させてくれるんですね・・・。」

 一瞬、沈黙が流れる・・・。

 「ま、まぁね。信用されてるからね。」

 アスカさんはぐいっと胸を張った。

 いいなぁ・・・。

 からんからん、と音がして、お母さんが冷たい飲みものと一緒に部屋に戻って来た。

 「お待たせぇ。アスカさん、お母様、何て仰って?」

 「あ、いいそうです。」

 アスカさんはとびっきりの笑顔でお母さんに返事をしている。

 「あら、良かったわね。厳しいって言われたから、てっきり無理かと思いましたわ。」

 また一瞬沈黙・・・。

 「信用されてるんだって。」

 私がアスカさんに代わって返事。

 「あらぁ。そうでしょうねぇ・・・。うちの子だったら絶対外泊なんかさせませんから。」

 お母さんは笑顔で私をぐりぐりしながら答えた。

 「それって、もしかして、私は信用無いってこと?」

 私はお母さんから飲みものを受け取りながら聞いてみた。

 「無いわよぉ?」

 うぅ・・・。

 あんまりだぁ・・・。



<続き>


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