転校生
Crossing Point
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Ophanim
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Seventh step
お祭りの当日・・・。
私は完成したアスカさんの浴衣を見て、改めてお母さんのセンスに感心していた。
もともとの赤い布地をより引き立たせる臙脂の下地。その間を縫うように飛びまわるチョウチョのようなオレンジの花。
これがまた、綺麗にコントラストになるの。
ちょっと継ぎ接ぎには見えないわ。まるで最初からそういう浴衣だったみたい・・・。・・・まぁ、半分くらいは足した布だから、ほとんど初めから作ったようなものだけど・・・。
ぴんぽぉん。
「こんにちわ。」
アスカさんがやってきた。
「いらっしゃい。どうぞ。」
私が階段を降りる間にお母さんが迎えに出ていた。
こんなこと、初めて・・・って、私がお友達を連れてくることが無かったからか・・・。
「あれぇ?どこか変わりました?」
アスカさんが不思議そうに首を傾げる。
でも、ちらっと引っ張ってみて、納得。
「うわぁ・・・凄いですね。あたし、ちょっと見ても判らなかったです。」
もともとの布地は出来るだけ目に付くところに回して、足した布地は引っ張ると出てくるように折ってあるの。
「それに、特別仕様だから、下着のラインが出ないようになってるの。」
「そんなの、気にしませんよ。」
アスカさんは早速服を脱ぎ始めた。
私はその間にアスカさんの浴衣についた”新機能”をチェック。
「わぁ・・・。」
私はお母さんの工夫にまた感心。
下着が触れるところは布を多めにしてあるみたい。
アスカさんは全然気にして無いみたいだけど、浴衣で動くと下着のラインが出てくるのよね。
だから、昔は何も着けないで着るのが普通だったみたい。
でも、恥ずかしいんだけどね。
それが嫌で浴衣もあんまり着なかったんだけど、まぁ、今年はこの”新機能”のおかげで気楽に着られそう・・・。
じゃ、そろそろ私も着替え・・・。
「こら、あんたは全部脱ぐの。」
???
「ど、どうしてぇ?」
「時間無かったから。」
私の浴衣を見てみると、本当になんにも変わって無い。
「ひ、ひっどぉい!」
「だって、他人様のを優先させるのは当たり前でしょ?」
「だからってぇ・・・。」
一生懸命説得した結果、結局”腰巻”のようなものを一枚追加して、下だけはちゃんとつけられることになった。
もう・・・。
で、今アスカさんは浴衣に袖を通して着付けしてる。
「むぅ・・・苦しい・・・。」
・・・。
いいなぁ・・・。
・・・何のことかは、教えてあげない・・・。
「あらぁ、ちょっと、緩めないと駄目ね・・・。うーん・・・。」
「あ、でも、こうすればいいです。」
アスカさんはぐいっと胸を張って浴衣を持ち上げた。
「それじゃ裾が短くなってしまうわよ?」
「歩きやすくて良いです。」
足首がはっきりと判るほど出て来ても、アスカさんは全然気にして無い。
「じゃ、今日はそれで仕方ないわね。お祭り終わったら持ってくると良いわ。」
お母さんはそう言って私達を送り出す。
「あ、レイ。ちょっとおいで。」
?
なんだろう?
「はい、お小遣い。」
「えぇ?今月はもうもらったけど・・・?」
私はちょっと警戒してお母さんを見上げた。
何かまた用事を言いつけられたりして・・・。
「でも、お祭りに行くんでしょう?たまにはいいわよ。」
じーっと見る。
「んもう、あげないわよ?」
「欲しい・・・けど・・・また何か”用事がある”とか言わないでよ?今日、本当に楽しみにしてるんだから・・・。」
早く帰ってこないといけなくなるくらいなら、いらない。
だって、碇君と一緒にいられる時間が短くなっちゃう・・・。
「・・・わ、私の日頃の行いが悪かったわ。・・・これは、本当に、”お小遣い”。何も言いつけないから、もらってちょうだい。」
お母さんはそう言って無理矢理に私にお金を握らせた。
私はまだ半信半疑でお母さんを見ながら、お財布に今もらったお金を入れる。
「それじゃあねぇ、えっとね・・・。」
「・・・返す・・・。」
「う、嘘嘘。
冗談!
あ、そうそう、う、団扇持って行きなさい。団扇。」
団扇を帯に差してもらう間、じーっとお母さんの目を見ながら、玄関を出る。
「レイ、もう行くわよ?ヒカリや馬鹿シンジが待ってるわ。」
アスカさんが焦れてる・・・。
「じゃ、私、もう行くからね、お母さん。」
「いってらっしゃい。」
「行ってきます。」
私はお母さんに手を振ってから、アスカさんと連れ立ってヒカリさんの家を目指した。
ヒカリさんと合流してから、鈴原君を迎えに行く。
「ん?なんちゅうか・・・馬子にも衣装やな?」
鈴原君が私達を見てそう言った。
「・・・ご、ごめんなさい・・・。」
私が謝った時・・・。
ごきぃ!
「な、
なにすんねん!
」
「
うるさい!
」
アスカさんは鈴原君の顔にぐーでぱんちしていた。
なんだか・・・アスカさん、機嫌悪いかも・・・。
それから相田君との待ち合わせ場所に移動。
相田君は私達を見ると何も言わずに写真を撮り始めた。
・・・っていうことは、まんざらでも無いのかしら?
碇君、何て言うかなぁ?
「なんや?ケンスケ、普段着やんけ?」
げしっ!
「な、
なにすんねん!
」
「
うるさいうるさい!
」
アスカさんの機嫌は相田君と合流してから更に悪くなったみたい。
それからずーっと鈴原君を蹴飛ばすようにして碇君の家へ・・・。
「
こんばんわ。シンジ君を迎えに来ました!!
」
アスカさんが玄関口で大きな声を張り上げる。
ユイおばさまが迎えに出てきた。
「こんばんわ、おば・・・・・。」
わぁ・・・。
アスカさんの声が止まったのも判る。
おばさまはとっても綺麗なイブニングドレス姿だった。
かしゃっと音がする。
・・・相田君・・・誰の写真でもいいんだ・・・。
まぁ・・・確かに、ユイおばさま、綺麗だけど・・・。
「じゃあ、いってきます・・・。・・・
!
」
碇君の目が大きくなる。
どう?
ねぇ、感想は・・・?
「
なんでシンジは浴衣やあらへんのや!
」
鈴原君の大声で、碇君は言葉を途中で飲み込んだように見えた。
「え?そんなこと言われても・・・。だいたいケンスケだって浴衣じゃないじゃないか!?」
「わいはいいんちょが”浴衣じゃないといけない”っちゅうから昔の浴衣無理矢理着とんのや。いいんちょ?どういうことやねん?わいだけやん。男で浴衣着とんの・・・。」
ヒカリさんは下を向いたまま何も言わない。
どかっ!
アスカさんの跳び膝蹴りが鈴原君のお腹に決まった。
「
さ、行くわよ、馬鹿シンジっ!!
」
アスカさんはユイおばさまの前で堂々とそんなことを言った。
さ、お祭り会場に出発。
「んなこというたかて・・・。」
「
うるさいうるさいうるさいうるさぁいっ!!
」
アスカさんは鈴原君が口を開くたびに蹴り飛ばしていた。
その後ろを碇君。
相田君がビデオを撮りながら歩いて行こうとするから、私達の前を歩いてもらう。
だって、・・・浴衣から足首が出るところを撮ろうとしてるんだもん・・・。
4人と少し離れて、私とヒカリさんが続く。
「あの・・・ヒカリさん。もしかして、鈴原君としか連絡取らなかった?」
小声で聞いてみる。
「じ、実はそうなの・・・。鈴原に電話して、すっかりもう仕事が終わったものだと・・・。って言うか、鈴原が男子連中に連絡すると思ったのよ・・・その時は・・・。あぁ、もう。そんなまめな奴じゃないって知ってたのに、どうしてあん時そう思っちゃったんだろう・・・。」
真っ赤な顔で、ヒカリさんは事情を説明してくれた。
「あぁ・・・もう、だめ!レイちゃん、早く行こう!」
ヒカリさんは恥ずかしくなったのか、私の手を引いて歩みを速めた。
折角前を行ってもらっていた相田君を抜いて、碇君も抜いて、アスカさんと並ぶ。
「アスカ、もう蹴らないでよ・・・。」
・・・なるほど・・・。
鈴原君はもうぼろぼろかも・・・。
「あ、着いた!!」
アスカさんはお祭の灯の中に走り込んでいった。
それを追いかけるようにして碇君。
「あたし達も行こうか?」
ヒカリさんの声に、私は微笑みながら頷いた。
でも、ヒカリさんの顔は私の方を見てはいなかった。
「せやな。」
ヒカリさんの声に答えたのは鈴原君。
私はゆっくり俯いて、そのままアスカさんの後を追いかけた。
「レイ。」
私が型取りをやっていると、小声でアスカさんが話しかけてきた。
「取れなかったです。」
「そんなの、どうでもいいのよ。」
・・・。
うー・・・。
「今からあたし達離れるわよ。シンジ連れて。」
?
「いい?次はヒカリの番でしょ?で、シンジを連れて出て行く。どうなると思う?」
えーと・・・。
「ヒカリさんと鈴原君と相田君が残る。」
「相田?あぁ・・・あいつ、もういないわよ?」
え??
くるくると周りを見回しても、確かに相田君の姿が見えない。
「だから、いい?」
はぁい。
「シンジ、ちょっと・・・。」
「なに?アスカ?」
「あのね、言いにくいんだけど、レイがお手洗いに行きたいの。」
って、
どうして私!?
「え?そうなの?綾波?」
「べ、いた・・・。」
アスカさんにお尻つねられた・・・。
「え、えぇ・・・。」
行きたくないですぅ・・・。
「じゃ、ちょっと探してみる。」
私達は碇君の後をゆっくりついていく。
「どうして私なんですかぁ?」
小声でアスカさんに聞いてみる。
「だって、トイレなんてかっこ悪いじゃん?」
あうー・・・。
私だって嫌だよぉ・・・。
「あったよ。綾波。」
うー・・・は、はぁい・・・。
「あ、ありがと、碇君・・・。」
少し引きつった感じでお礼を言う。
「待っててあげるから。」
アスカさんが“親切に”言ってくれる。
「僕も?」
え?い、碇君はいいよぉ・・・。
「当たり前でしょ?」
ぱたん
・・・。
「綾波、顔引きつってたよね?」
「我慢してたんじゃないの?」
うー!!
い、今すぐ出たいよぉ・・・。
つねられたお尻をさする。
まだひりひりしてる・・・。
痛くなくなったら出ようかしら?
「先戻ったらだめかな?」
「駄目に決まってるでしょ?」
い、碇君行っちゃうの?
まだちょっと痛むけど・・・。
もう出たいよぉ・・・。
「時間かかるね?浴衣だからかな?」
「もしかしたら大き・・・。」
!
絶対出るもんっ!!
かちゃ。
「お待たせ。」
ちっ!
”ちって何ですかぁ?”
”あ、あら?聞こえた?”
”
もう!
あることないこと・・・。”
”あはあはあは・・・。”
「
シンジー!
」
あ、逃げた・・・。
「何?アスカ?」
ちょっと先に戻りかけていた碇君が戻ってくる。
「こっちこっち。」
アスカさんは碇君を引っ張ってヒカリさん達と反対の方に連れて行った。
・・・あ、射的だ・・・。
「あれやって!」
アスカさんは射的を指差して碇君を押して行く。
碇君は押されるままに射的ゲームの受け付けにお金を払って早速銃を構える。
「あたし、あのペンギン欲しい!」
アスカさんが碇君にくっつくようにして景品の”岩跳びペンギン”を指差した。
いいな・・・。
景品のペンギンさんも可愛いけど、碇君の隣が、いい・・・。
碇君はアスカさんに押されて傾いている。
狙い難そう・・・。
と、思ったらアスカさんの反対側にいた人が離れて行く。
窮屈になったのね。
「碇君、私も欲しい・・・。」
そっとアスカさんの反対側に陣取る。
狭いけど、碇君とくっついていられるから平気・・・。
「ちょっと、黙って・・・。集中できない・・・。」
ぱしゅ!
・・・外れ。
「
ああっ!!もうっ!!
馬鹿シンジっ!ちょっと貸しなさいよ!」
アスカさんは碇君から銃を奪い取ろうとした。
「あ、
なんだよ!
惜しかったじゃないか、今の!」
碇君はアスカさんに取られないうちに撃とうとして、さっきより短い間合いで狙いをつけて撃った。弾は外れたけど隣の蛙さんのキーホルダーに命中!良かったね、碇君。
「
馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!
」
アスカさんが碇君をぽかぽかする。取れたんだからいいじゃない、許してあげようよ・・・。
ぱしゅ!
あれ?
ころん・・・。
ペンギンさん、取れたよ?
「やれやれ、この位のハンデでもまだまだ君らには負けんね・・・。」
あ、相田君だ・・・。
えーっ!
あんなに後ろから当てたの??
す、
すっごーいっ!
相田君は私達のやり取りを聞いていたわけじゃ無さそうだけど、アスカさんがそのペンギンを欲しがっていた、っていうのは判ったんだろう。景品のペンギンさんを迷わずアスカさんにプレゼント。
「ありがと!”おたく”の面目躍如ね!たまには役に立つじゃなーいっ!!」
アスカさんは相田君にもらったペンギンさんを抱くようにして大喜び。
「他には?」
「え?いいの?」
「僕は当てることが楽しみだからね。お望みのものを。なんなりと。」
じゃあね、じゃあね、・・・。
アスカさんはどんどん景品を指差し、相田君は狙い違わず撃ち落とす。屋台のおじさんが目を丸くしてる。
私はその光景を近くにあったベンチに座って見ていた。
やっぱり、アスカさんは人気者。
碇君や相田君がアスカさんのために一生懸命・・・。
もし、あのペンギンさん、碇君が取ってたら、きっとアスカさんにあげたと思う。
”うーん・・・でも、アスカが先に欲しいって言ったからね”とか言って・・・。
”綾波には何か別のを取ってあげる”くらいは言ってくれるかもしれないけど、ね。
足音がして顔をあげると、そこには申し訳無さそうな顔をした碇君・・・。
「ごめんね、綾波。ペンギン取られちゃった。蛙でいいかな?」
碇君は私にさっきの蛙さんのキーホルダーを差し出した。
「これ、私がもらっていいの?」
ほんとに?
もらっちゃうよ?
いいの?
本当に?
ありがとう、碇君!
私は蛙さんを大事に抱きしめた。
「ありがとう、碇君。大事にするわ。」
もう、嬉しい・・・。
”ペンギン、取られちゃった・・・”。
碇君、私のために狙ってくれたの?
あ、いいの。
答えを聞かなくても・・・。
私が、そう思えれば、それでいいの・・・。
「あれ?綾波はペンギンのぬいぐるみが欲しかったんじゃないの?」
うん、そうだよ。
でも、本当に欲しかったのは、その言葉の方だよ。
私はふるふる、と首を横に振った。
「ううん、碇君が取ってくれたものなら、何でもいいの。」
私はもう一度蛙さんに頬ずりをした。
「
馬鹿シンジっ!
」
アスカさんが大声で碇君を呼んでいる。
「
ほらっ!さっきのおかえし!
この天才アスカ様にかかれば景品の一つや二つ取ってくるのは簡単だってこと、思い知って?」
アスカさんは名誉挽回、とばかりにパズルゲームで山のように景品を取って来た。その中から、バイオリンを弾く水兵さんのぬいぐるみをプレゼント。
あ、私も何か碇君にプレゼントしたいなぁ・・・。
「ね、碇君、今度は私が何か取りたい。」
「え?綾波でも出来るゲーム?」
「で、でもってなによぉ?ひどくないぃ?」
「あははは、レイには無理よ。」
「出来るもん!」
他愛もない会話。
でも、楽しい会話・・・。
私は生まれて初めて、お祭りはとても楽しいところだ、と思った。
<続き>
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