転校生 Crossing Point −type←戻る
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 Second step



 「あ、帰ってきたみたいよ?」

 「あぁあ、これじゃもうしばらく雨ね。」

 私が教室に戻ると、洞木さんとアスカさんが私を待っていてくれた。

 「あ、待っててくれたんですか?嬉しい・・・。」

 「随分遅かったわね?・・・って、アスカ、それ、ほんと?あたし、傘持ってきたかしら?」

 洞木さんは私をちょっと見て、すぐアスカさんの方を見た。

 「だぁってさぁ、ミサトが生徒を注意して、優等生が廊下走ってくるのよ?雨も降るわよぉ。」

 「あ、なぁんだ、そういうことぉ?」

 アスカさんと洞木さんはからころと転がるような笑い声をあげながら、私の鞄を持ってきてくれた。

 「さぁて、帰ろ帰ろ。ヒカリぃ、どの辺なの?」

 「あたしの家の近くでいい?」

 「えーーっ!?それって、あたしんちの逆方向じゃないの?」

 「そうよ。何か文句ある?」

 二人が楽しそうに前を行く。

 私は二人の後ろからついていく。ちょうど、二人の間に立つように。こうすると、二人がお互いに話しているのが見えるの。

 「綾波さん、今日、ごめんね?あたしの手紙のせいで・・・。」

 洞木さんが不意に振り返って私に謝った。

 ど、ど、どうしよう?

 全然気にしてないのに・・・。

 「あたしも悪かったわ。ちゃんと折ってから渡せば良かったのよね?あたしさぁ、ほら、えーと、何よ?いい加減っていうか、適当っていうか・・・その、なんか、日本語あったじゃない?」

 アスカさんは喉まで出かかった言葉を求めるように洞木さんを見た。

 「ずぼら?」

 「そう!それ!!あたし、あぁいうのを綺麗に折り直すってできないのよね?ずぼらだから。つい広げたままで渡しちゃってさ。だからレイはシンジに聞いたのよ。」

 アスカさんはつかえていたものが取れたので一息に話した。

 私はただ頷くだけ。

 アスカさんって私の考えていることまで判るのかしら?

 「そしたらさぁ!あの馬鹿シンジ!声が大きいっていうのよっ!あいつ、馬鹿なくせに要領悪いっていうか要領悪いから馬鹿っていうか・・・。」

 あ、あの、わ、私が悪いから・・・アスカさん・・・。

 「ミサト先生もいきなり没収なんてひどいわよねぇ?」

 洞木さんはアスカさんを止めるでもなく、話を広げていく。

 「いきなりロッテだもんね?」

 ?

 アスカさん???

 「あ、ごめん。えーと、ロッテがレッドだから赤、ね。んで、えーと、ゲルペがイエローだから、黄色か・・・。」

 ぶつぶつと何ごとか話している・・・。

 「だから、いきなりレッドカルテはないじゃんね?イエローが最初で・・・。」

 きょとん???

 「なぁに?あんたら、フスバル・・・じゃなくて、んーと、なに!?もうっ!!

 アスカさんはまたぶつぶつと独り言を言っている・・・。

 「だから、フットボール、見ないの??」

 アスカさんが足で何か蹴る真似をしている。

 ・・・?

 でも、それ、フットボールじゃなくて、サッカーじゃないかしら?

 「サッカー?」

 洞木さんがアスカさんの気持ちを読みとって助け船を出した。

 「え?日本はサッカーなの?・・・アメリカばっかりだと思ったら・・・何でここだけイギリスなの???・・・んもぅっ!!なんで英語なら英語使わないのよっ!!」

 アスカさんはぶつぶつ何か文句を言ってる・・・。

 何か、色々苦労があるみたい。

 こんなんで試験、大丈夫かしら???

 「んまぁ、とにかく、あれはあんたが悪いんじゃないから。」

 アスカさんはぽぉん、と私の頭を叩いた。

 ちょっと痛い・・・。

 でも、嬉しい・・・。

 私たちはまた歩き出した。

 気がついたら、私、あんまり話してないかも・・・。でも、楽しい。みんなと一緒にいるだけで、楽しい。

 こういうのって、いいな・・・。

 いつ以来かな?

 私、幼稚園とか保育園とか、行ってないから・・・。

 小学校かな?

 んー・・・でも、確か、幼稚園くらいの年代でもこういうこと、あったような気がするけど・・・。

 私が昔のことを思い出そうと考えていると、前を行く二人の足が視界に入ってきた。

 いつのまにか俯いていたみたい。

 「あ、その・・・綾波さん・・・。もしかして、今日、都合、悪かった?」

 洞木さんが心配そうに私を見ている。

 「えぇ?」

 あまりにも不意に聞かれたので私は戸惑った。

 「そう?じゃ、良いわよ、先帰ってて。」

 アスカさんは私が”えぇ”と言ったように聞こえたのかもしれない。

 「遅くなっちゃったもんね。うちも門限あるから・・・判るわ。アスカ、門限は?」

 「んなもん、無い無い!」

 え?

 あ、え?

 わ、私、大丈夫だよ???

 からんからん・・・。

 「じゃ、また明日ねぇ!」

 「綾波さん、またね!」

 ・・・う、うん・・・。

 私は店の中に入っていく二人を見送った。

 ご丁寧にも、軽く手を振って・・・。



 「ただいまぁ・・・。」

 「あら、お帰りなさい。」

 家に帰ったら、お母さんがいる。

 いつものことだけど、なんだか、嬉しい。

 今日は特に、嬉しい・・・。

 「ちょっと着替えてくるね?」

 「はいはい。」

 部屋に戻って、着替え。カーテン閉めて、服をハンガーに掛けて、埃払って、皺伸ばして・・・。

 制服を脱いで、部屋着に着替える。

 カーキ色のトレーナーとデニムのキュロット。

 私の部屋着。

 とんとんとんって階段を下りる。

 そこからちょっと曲がって、お台所。

 私のエプロン、つける。

 「何か良いことあったのね?」

 私が何も言わなくても、お母さんには判るみたい。

 「あのね。今日ね・・・。」

 お母さんに今日あった出来事を話して聞かせる。

 「そう、良かったわね。」

 「でもね、喫茶店の中には入れなかったの。私が考え事してたら、勘違いされてしまって・・・。」

 ちょっぴり残念。

 「あんたがのんびりしてるからよ。でも、あんたがお友達の話するのも珍しいわね。」

 とんとんとん・・・。

 「ねぇ。お母さん。今度、新しいお料理も教えて?」

 「急にどうしたの?ケーキとかしか焼かなかった子が?この前は毛糸の編み方だったわよね?」

 な、なんでもいいじゃない!

 「いいの。色々やりたいの。」

 「この間話してくれた子?名前、教えてくれなかったじゃない?もしかして、男の子?」

 べ、別に碇君のため・・・だけじゃ、ないから・・・うん。いつか、役に立つわよ・・・多分・・・。

 「うー・・・その、私も、ほら、色々知りたいのよ・・・。」

 危ない危ない・・・。

 「それよりも、仮縫いと本縫い、そろそろ覚えなさいよ?」

 「判った。うん。・・・あ、いい感じ。」

 お味噌汁、出来た。

 「じゃ、お風呂沸かしてくるわ。」

 お台所はお母さんにお任せ。

 「あ!お母ぁさぁん!今日お洗濯は?」

 「あっ!いけないっ!忘れてたわ。レイ、大急ぎでやっておいて!」

 はーい。

 ちょうど良いわ。今日の体育で汚れた服も洗っちゃおっと・・・。

   ・・・

 お父さん、お帰りなさい。

   ・・・

 「お母さん、お父さんがいただきます、言わなかったぁ!」

   ・・・

 「お風呂沸かしてあるよ?・・・うん、すぐ入れる。」

   ・・・

 夕食後、お片付けを手伝って、すぐお勉強。

 洗い物とかしていると、お母さんが”こっちはいいからお勉強しなさい”って怒るから・・・。

 しばらく黙々と机に向かう。

 「レーイ?お風呂空いたわよ?」

 階下からお母さんが呼んでいる。

 ふぅ・・・。

 今日の分の”お勉強”はここまで。復習したけど、授業に出るようになってから、授業で進んだ分の復習しかしてないから・・・時間、余るのよね・・・。予習はもうやってあるし・・・。

 みんなって、普通どういう生活なんだろ?

 お風呂に入って、あとは寝るだけ。

 今日、みんなと話せて楽しかった。

 やっぱり、みんなと一緒が良いな。

 でも・・・。

 最後、私、混ざれなかった。

 もう一歩踏み込めたら、もっと、良かったのに・・・。

 どうしてあそこで”ううん、まだ大丈夫”の一言が言えないんだろう・・・。

 結局、人との接触、避けてる。

 私って・・・だめね・・・。

 碇君もアスカさんみたいな人がいいんだろうな・・・。

 「ふふっ!あんたたち、あたしが如何に天才少女か見せてあげるわよっ!!」

 耳の奥にこの間のアスカさんの声が残ってる。

 ”あんたたち”って言いながら、視線は碇君だけに注がれていた。

 二人、幼馴染で仲良しだし・・・。

 あ、いけない、気分が沈んできちゃった・・・。

 取りあえず、今度の試験、頑張ろう・・・。



<続き>


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