| 転校生 R |
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| 作 : Ophanim |
| 第9話 二人の夜 |
「渚先生はどうなさるんです?」 お義父様が渚先生に予定を聞いてる。 「あぁ、私はカヲルのところに戻ります。やはり親としてはねぇ・・・。」 渚先生は済まなそうに頭を掻いてる・・・。ふふ・・・当たり前よね。教え子も息子も同時に合格して・・・どっちと一緒にいるかなんて・・・。 「あ、カヲル君にもおめでとうって言って下さい。」 碇君が渚先生と握手してそこで別れた。 「それじゃ、夕食にしましょうか?」 お義母様が私の肩に手を置いた。 「レイちゃん、何が食べたいの?」 え?わ、私が決めるの??? 「あ、あの・・・じゃあ、碇君・・・。碇君が決めて・・・。」 お祝いだもの、碇君が決めた方が・・・。 「じゃあねぇ・・・。」 碇君は近くのレストランに私達を連れていった。 「マスター、”お祝いセット”。」 碇君が嬉しそうに何か言った。 「お!ついにやったか!!おめでとう!」 二人は固く握手を交わした。碇君が説明してくれたところによると、この店は碇君の行きつけなんだって。それで、前から碇君がオーディションに合格したら”特選お祝いセット”をご馳走してくれることになってたんだって。 「その代わりに、僕がこの店で曲を弾いたりするんだ。サインだって置いてくれるんだよ?」 へぇ・・・。 「あら、すっかり有名人なのねぇ・・・。それじゃ、明日のデート、大変でしょう?」 お義母様が茶化すようにそう言って笑った。 「おお、そうだ、デートと言えば、明日の費用は私が持つからな。いくらでもいいから遊んできなさい。」 お義父様ったら・・・すっかり酔ってらっしゃるの・・・。 「デートって何だよ?」 碇君はきょとんとした顔をしている。それはそうよね。碇君がステージに上がってる間に決めたんだもの・・・。 私達は経緯を説明してあげた。 「えぇ・・・困るなぁ・・・明日、午前中は合格者の集まりがあるんだよ・・・。」 碇君・・・。 「わ、私、午後からでもいい。・・・待ってるから・・・。」 私は慌てて碇君を説得した。 「シンジ、断るなんて可愛そうなことはしないだろうな?」 お、お義父様・・・なにも脅さなくても・・・。 「判ったよ。それじゃ、ローマでも行く?」 うーん・・・。 「・・・お任せで・・・。」 よく判らないから・・・。 「”トレヴィの泉”って知らない?後ろ向きにコインを投げて巧く入ると願いが叶うとかいう奴?あと、”真実の口”とか・・・?”ローマの休日”なんかでもやってるでしょ?綾波って映画見ないの?」 ・・・だって、碇君と一緒に見ないと楽しくないじゃない・・・。 じわ・・・。 「あ。泣かせた・・・。」 お義母様が目敏く私の涙を見つけた。 「な、泣いてないです・・・。」 私は慌てて瞬きをしてなんでもない風を装った。 「ご、ごめん。綾波、どうしたの?」 碇君が慌てて謝ってきたけど・・・お義母様に耳を引っ張られて何か言われてる・・・。お義母様って本当に敏感・・・。 「ほんっとに鈍いんだからうちのごろつきどもは・・・。」 お義父様もとばっちりで怒られてる・・・。 くすくす・・・。 違います、お義母様が鋭いんですぅ・・・。 私はそう言って助け舟を出した。 「さて・・・じゃ、今日はこれで・・・。」 名残惜しいけど・・・おやすみ、碇君・・・。 「おやすみのキスとかしないの?」 し、しませんっ!! 「あはは、じゃ、綾波、明日ね。おやすみ・・・ってあれ???」 がちゃがちゃがちゃ・・・。 渚先生の家の扉は固く閉ざされたままだ。 「あ、しまった!カヲル君、今日ナポリだ・・・。」 碇君が困ったような顔をする。 ナポリってここから遠いの? 「電車で2時間くらいかかるよ。電車だって時間通り来ないし・・・。」 困ったわ・・・。 「じゃあ、私達と一緒に泊まる?レイちゃんの部屋、ベッド一つ余ってるから・・・。」 えええええええええええええええ!? 「そ、そんな・・・だ、だめですっ!」 「そ、そうだよ、母さん!なに言ってるんだよ!!」 私も碇君も真っ赤になって却下した。 「どうして?」 お義母様は平気そう・・・。 「こ、心の準備が・・・。」 心臓がどきどきしてる。 い、碇君と同じ部屋に? ね、眠れないよぉ・・・。 「そ、そうだよ・・・。い、いろいろ準備が・・・。」 碇君も、もごもごとなにか言ってる。 「別に問題無いでしょう?だいたい、私とレイちゃんが一緒の部屋にいればいいだけのことじゃない?二人ともなんだかんだ言って本当は一緒の部屋にいたいんじゃないの?」 あ・・・え・・・う・・・。 私達は真っ赤になってうつむくしかなかった。 「そ、それはそうだけどさぁ・・・。」 碇君がぼそぼそと呟く・・・。 え!? そうなの? う、嬉しいけど・・・。 私達はホテルまで自然に二列になって歩いた。 碇君の隣は、勿論、私・・・。 「シンジ、フロントに今日だけツインルームを二人で使うことをフロントに伝えておいてくれ。」 お義父様が振り向いてそう言った。 「あ。そうか。判ったよ。追加料金は払っておいてね。」 碇君はにこにこしながら冗談っぽく話した。お義父様は当たり前だろ、と苦笑いしながら碇君を小突いた。 「それと、部屋帰ってから何か食べるか?」 「うーんと・・・一応何か飲み物とお菓子が欲しいかな?でも、多分寝ちゃうよ。」 それを聞いていたお義母様が私に話しかける。 「レイちゃんは?」 「えっと・・・いらない・・・かな?寝る前に食べると太っちゃうし・・・。」 ぺち! 「なぁに言ってんだよ、綾波。少しくらい太っても大丈夫だよ。」 「痛いでしょお?」 碇君は私の頭を平手でぺちぺち叩いた。 「こら、シンジ、やめなさい。・・・レイちゃん、私ねぇ、暑いからアイスでも買って来ようかと思ってたの。どう?」 あ・・・いいかも・・・。 「欲しいのね?じゃ、買ってくるから・・・。」 お義母様はそう笑ってくるりと方向を変えた。お義父様が慌ててついていく。 「ユイ、一人じゃ危ないよ。」 「あら、大丈夫よ。こんなおばさん誰も相手にしませんって・・・。」 「私は相手にするのだ!」 あははは・・・。 「碇君のご両親、仲が良くていいわねぇ・・・。」 私は碇君の顔を見上げた。 「子供としては恥ずかしいんだけどね・・・。」 碇君は照れながら答えた。 「僕らもああなるといいね。」 え・・・? それって・・・。 「シンジ、ちょっと・・・。」 ちょうどその時、お義母様が碇君を呼び寄せた。 ああん、いい雰囲気だったのにぃ・・・。 私は少し離れた場所で碇君を待つことにした。 碇君は意外と早く戻ってきた。顔を真っ赤にして・・・。 「い、行こうか?」 「え?あ、うん・・・。」 何を話していたんだろう? 「あの、さっきのって・・・。」 私はもう一度聞きたくて碇君の腕を捕まえた。 「え?き、聞こえてたの?わ、忘れてよ・・・。」 「いやぁよ!もう一回言ってぇ・・・。」 私達はじゃれあいながら、ホテルに戻っていった。 シンジは悩んでいた。 (母さんが”二人きりになっても無茶したらだめよ”何て言うからかえって意識しちゃったじゃないか・・・。) エレベーターにはシンジと綾波の二人だけだ。 (父さんも父さんだ・・・。) ゲンドウは”どうしてもという時はせめてこれをつけろ”と”アイテム”を手渡したのだ。今のシンジには核爆弾よりも強烈な衝撃を与えたものである。 (そろいもそろって・・・。) ため息の一つもついてやりたくなる。 そこで部屋割の問題が出てくる。 綾波とユイが一つの部屋、これは決まっている。が、ダブルの部屋にするのかツインの部屋にするのかが問題なのだ。 父親とダブルで寝るのは嫌だ。だが、ツインの部屋に行けば行ったで問題は残る。 今のシンジが綾波がいたベッドに横になったら、とても眠れそうにない。そうかと言って父親をそこに寝かせるのは (冗談じゃ無い。) 絶対に嫌だ。 (仕方が無い、ソファーで寝よう・・・。) シンジはゲンドウと一緒にダブルの部屋に行くことに決めた。ダブルの部屋には大抵大きなソファーが置いてある。 大丈夫、夏だし・・・。風邪なんてひかないだろうし・・・。 「えーと、綾波、僕がが母さんたちの部屋に移動する、でいいかな?」 シンジは自分の心の動きを悟られないように、できるだけ自然に話しかけた。 「ええ、構わないわ。」 綾波はそう答えると、エレベーターの階数表示に目を移した。沈黙がエレベーターの中を満たす。 「えーと・・・後で、その・・・遊びに行ってもいいかな・・・?」 「ええ、構わないわ・・・。」 ・・・。 沈黙。 ・・・。 ちーん! 目的の階に着いたことを告げるチャイムが二人の心臓の鼓動を高くする。 エレベーターの扉が開くと、二人の緊張も少し和む。 「綾波、カードキー・・・。」 「え?あ・・・はい・・・。」 シンジに応えてカードキーを操作する綾波の姿が何とも言えず可愛らしくて、思わず背中から抱きしめてあげたくなる。それを理性の力で必死に堪える。 「じゃ、僕は隣にいるから・・・。もう少ししたら、電話するよ・・・。」 「うん・・・。後で、ね・・・。」 綾波が部屋の中に身体を半分入れて答える。 扉はゆっくり、ゆっくりと、閉じられた。 シンジはそれを全て見届けた後、駆け足で自分の部屋に向かった。同じ階でも、ツインの部屋が続く間取りとダブルの部屋が続く間取りとの”境目”に二部屋とったのでドアとドアの間が結構離れている。 がちゃ。 ? がちゃがちゃがちゃ! 「あ!そうか・・・。」 シンジは恨めしそうに自分の手の中のカードキーを眺めた。 これは綾波の部屋のカードキーだ。 ダブルの部屋のカードキーはゲンドウとユイがしっかり持ったまま買い物に行っている。 「うーんと・・・。」 悩む必要は無い。 今から戻ってこんこん、とドアを叩く。 それだけでいいはず。 だが、ついほんの一分前に叙情豊かに別れて来たばかりなのだ。なんとも気恥ずかしい・・・。 「仕方・・・ないよね。」 結局シンジはとぼとぼと綾波の部屋に戻っていった。 「はい、今開けます・・・。」 私は手早く髪にタオルを巻きつけると、軽くバスローブを羽織ってドアのところに飛んでいった。お義母様、早かったわね・・・。 「すみませ・・・きゃ!!!」 「あ!ご、ごめん!!」 ばたん!! どきどきどきどきどきどきどき・・・。 部屋の外にいたのは碇君だった。 私はもう一度バスローブの胸が開いていないことを確認して、そろそろと扉を開いた。 「ど、どうしたの?」 碇君は向こう向きに廊下に座り込んでいた。 「い、いやその・・・鍵が・・・。」 碇君は向こうを向いたままで答えた。 「鍵?」 「うん、僕がフロントでもらった鍵って、この部屋の鍵でしょ?」 碇君はごそごそとポケットを漁った。 「と、とにかく入ったら?」 廊下に座り込んでるなんて、なんか変だよ? 「じゃ、じゃあ、綾波、もっとちゃんとした服に着替えてよ・・・。」 そ、それはそうだけど・・・。 「う、うん。着替える・・・。でも、碇君、鍵持ってるんでしょう?」 私がそう言うと、碇君はポケットから引き出した鍵を背中に持ってきた。 「だ、だからほら!これ渡すから、着替えて・・・。」 「そ、そう言う意味じゃなくて・・・。信じてるから・・・。中入っててもいいよっていう意味で・・・。」 私は碇君が気を悪くしたんじゃないかと思って慌てて弁解した。 「いいの?」 碇君は不思議そうに私を見上げた。 「い、いいの。あの・・・下から見上げられると、かえって恥ずかしいから・・・やめて・・・。」 私は胸元を押さえながら碇君の目の前に手を出して目隠しをした。 「ご、ごめん・・・。じゃ、目、瞑って行くから、手を引いていって・・・。」 碇君はそう言って立ち上がると、目を閉じた。私は碇君の手を握って、ゆっくりと部屋の中に移動した。 「足、気をつけて・・・。で、そこ、ベッド・・・。あ、ちょっと待ってて・・・。うん・・・はい、腰掛けて・・・。横になって・・・。ううん、違う違う・・・そうそう・・・。」 私は目を閉じたままの碇君を誘導して、ベッドに寝かせた。 「じゃ、ちょっと待ってて・・・。」 私は碇君から離れると、荷物をいれた鞄を持ってバスルームに移動した。 中から鍵をかける。 バスルームの中はまだ湿っぽい。私はタオルで水滴を拭き取った。 (換気扇を回したほうがいいわね・・・。) そっとドアを開く。 「碇君・・・。」 声をかけたけど、碇君は横になったまま・・・。 これなら大丈夫・・・。 私はそっと換気扇のスイッチを入れた。 また中に戻って鍵をかける。 ふぅ・・・。 私はちょっと気を抜いてバスローブの前をはだけた。ただでさえ暑い夜なのに、こんな格好で碇君と一緒にいたから、緊張して汗が出てしまった。もう一度軽くシャワーを浴びる。それからバスタオルでもう一度身体を拭いて、汗をかかないうちに手早く下着を着ける。 「んー・・・。髪は仕方ないかな・・・。」 おかしくないかどうか、鏡で確認する。 (・・・い、いきなり迫ってこられたら・・・どおしよぉ・・・?) 上にT−シャツでも着ておこうかな・・・。それから部屋着を着て・・・暑いかな?・・・でも・・・。 散々迷った挙句、いつも通りの格好・・・。 迫って来られたら、もう、仕方が無い。抵抗しないことにしよう・・・。好きなんだし・・・。 「お、お待たせ・・・。」 なんか違うような気もするけど・・・。 でも、碇君は横になったままぴくりともしない・・・。 「碇君?」 すー、すー・・・。 寝てる・・・。 碇君は幸せそうな顔で眠っていた。 それもそうね。今日は、頑張ったもん。疲れてない筈、無いよね・・・。 さっきまで散々悩んで、迷って、一大決心をして出てきたのに・・・馬鹿みたい・・・。うふふ・・・。 私はそっと碇君の隣に横になった。碇君の寝顔が良く見える・・・。 「これからも、よろしくね・・・。」 私は碇君の寝顔に微笑みかけた。 |