| 転校生 R | |||||||
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| 作 : Ophanim | |||||||
| 第4話 快気祝 | |||||||
・・・。 あぁあ・・・。 これじゃ手紙も書けないよぉ・・・。 私はため息をついてまた布団に潜り込んだ。 「あらあら、ため息なんてついて・・・。なんて書いてあったの?」 お母さんはノートパソコンを叩く手を止めた。 「ん・・・。私が元気じゃないと嫌だって・・・。」 私は布団の中から返事した。 「じゃあ、早く治さないとね?大丈夫よ。去年が不思議なくらい元気だったんだから・・・。毎年の事だもの、またすぐ退院できるわ。」 お母さんはそう言って慰めてくれた。 そう・・・。 そういえば毎年この時期は通院と入院の繰り返しだった。 去年はそんなこと無かったのに・・・。 やっぱり、碇君がいるのといないのは全然違うのかな・・・。 「それに、去年はほら、なんていったっけ?あの元気な女の子。あの子がかなり早くからあなたを外に連れ出していたでしょう?だから、あなたも夏になっても日差しに負けなかったんじゃない?」 あ、そういえば・・・。 去年はアスカさんが私を色々連れ回したっけか・・・。 アスカさん、私が”あんまり日にあたると具合が悪くなる”って言っても全然許してくれなかったわねぇ・・・。 ”シンジと一緒にいるときにあんた、制服でいたいわけ?折角可愛い顔しているんだからもっと可愛い服着ないとダメだってばっ!”とか言われて・・・。 私もそう言われると何も言い返せないから、買い物に行ったし・・・。 でも、アスカさんは結局自分の服を選ぶんだけどね。 私はくすくすと思い出し笑いをした。 そうしたらもう私の方もすっかり身体が悪いとかなんとか、そんなこと忘れちゃって・・・。 やっぱり、みんながいたから、っていうのが大きいのかな・・・。 「レイ?お母さん、少し家に戻るけど、一人で大丈夫よね?」 あ、え? 「あ、うん。大丈夫。いってらっしゃい・・・。」 私はそう言ってお母さんを送り出した。 「少し、眠ろうかな・・・。」 私はそう呟いて目を閉じた。 「今日の体育は外でソフトボールです。」 えーーーーーっ!という声が教室中に響く。 「こないなええ天気の日になんでプールやないんや?」 鈴原君が先頭を切って文句を言っている。 「他のクラスが使うから仕方がないの。文句ばっかり言っていないでさっさと動く!」 先生はそう言って私達に指示を出した。 私達は男子のぶつぶつと言う文句と一緒に更衣室へ移動した。 「でもさぁ・・・。男子と一緒にプールに入るよりはましだよねぇ?」 そんな声も聞こえてくる。 去年はみんな仲良かったんだけど、今年に入って碇君、渚君、それにアスカさんが出て、他の中学から転校してきた人が増えてくるうちにまた普通の感覚に戻っているのかも・・・。 「違うわよ!」 ソフトボールの打順を待っている間にヒカリさんに話したらヒカリさんは私の意見を即座に却下した。 「そうよ、違うわ。レイちゃん、男子がさぁ、ほら、保健の授業で仕入れた話でからかうからよ・・・。」 長門さんもヒカリさんと同じ意見だった。 「え?でも、私、別に何も言われてないけど・・・。」 私がそう言うと、長門さんやヒカリさんはちょっと苦笑いをした。 「あ、もしかして・・・レイちゃん、まだ泳げないの?」 ? そういえば去年はほとんど見学したけど・・・。 「ううん?もう少しは泳げるようになったと思うけど?」 私達が守る番になったからその話はそれでおしまいになった。 うん? あれ? ちょっと曇ってきたかな? 目の前が少し暗くなったので、私は空を見上げた。 雲があるようには見えない。 空があるようにも、見えない・・・。 私はそのまま気を失った。 「で、入院、と・・・。」 私が目を覚ましたとき、ヒカリさんがお見舞いにきてくれていた。 「うん。ごめんね。あの時助けてくれたの、ヒカリさんでしょう?」 もともと太陽に当たるとかなり体力を消耗する体質に加えて、あの日はとても暑かったし・・・。 「ううん、いいのいいの。でも、まさか入院する事になるなんて思わなかったわよ。でさぁ、あの話の続きなんだけど、レイちゃん、”まだ”なの?」 私はここにいる間に保健の本も読んだので今は何の事か判る。 「ううん。そんな事無いけど・・・不規則だから・・・。」 私は顔を紅くしながら答えた。 なるほど、こうやってからかわれていたら、男子に近づきたくなくなるなぁ・・・。女同士だって結構恥ずかしいのに・・・。 「判った?今度気をつけてみな?結構みんなレイちゃんの方見ているから・・・。」 え?どうして? 「やっぱり、可愛いからじゃない?碇君もいないし・・・。」 えぇ!?そうなの・・・。 でも・・・やっぱり・・・嫌だな・・・。そういうの・・・。 あ。 時間だ・・・。 「ごめんなさい、ヒカリさん。それ、押してくれない?・・・ありがと・・・。」 ヒカリさんがボタンを押してすぐくらいに看護婦さんが飛んできた。 「はいはい。ごめんねぇ・・・いつもいつも・・・。」 看護婦さんはそう言いながらてきぱきと点滴の器具を片づけた。 「はい。これでいいわ。あとは身体起こしてもいいからね。じゃ、また何かあったら呼んでね。」 看護婦さんは笑顔のままで部屋を出た。 入り口で振り返る。 「あ、あと、さっきみたいにあたしが忘れているなぁっていう時もお願いね。あ。勿論、先生には内緒にしててねぇ・・・。」 悪戯っこのような顔でウィンクをして去っていく。 私も笑顔で見送った。 「え?いつも忘れるの?あの人・・・。」 ヒカリさんが意外そうな顔で私の顔を見る。 「うん、本人はそう言っているけど、忘れているわけじゃなさそうよ。私はほら、生死に関わる病気っていうわけじゃないから後回しにしているんだと思う。でも、そう言ってしまうと私が嫌だろうと思ってあんな風に言っていると思うわ。」 その証拠に、私が眠っている間に時間が来たときでもちゃんと作業は終わっているもの・・・。 私の説明でヒカリさんは納得したみたい・・・。 「いいわねぇ・・・。あたしも看護婦になろうかなぁ・・・。」 え?どうして? 「ほら、鈴原がね。バスケ部でしょう?でも最近”膝が痛い”とか”腰が痛い”とか言い出すのよね。あいつ、頭で考えるより先に身体動かす方だから、あたしがそう言う所は面倒見ないと・・・。」 ヒカリさん、堂々とそんな事を・・・。 「え?あ。だ、だめよ?他の人に言ったらぁ!」 「嫌ですぅ!私だってみんなの前で”自分の将来の夢”なんて作文読みたくないもの・・・。これは早速伊吹先生に報告、かなぁ?」 私はお見舞いに貰った果物の中からバナナを一本とって電話をかけるふりをした。 「あ、伊吹先生ですかぁ?私、入院してて書けないからヒカリさんにお願いしますぅ・・・。え?卒業文集に使うぅ???」 「ちょ、ちょっとぉ!冗談でしょう!?」 私がそう言うとヒカリさんは大慌てで私が電話機のつもりで使っていたバナナを取り返した。 「やぁん、返してぇ・・・。」 「だめ!こうしてやる!・・・むぐもぐ・・・。」 ヒカリさんは素早く皮を剥くとバナナを口の中に押し込んでしまった。 「でも、早く良くなってね。でないと本当にあたしに回ってきそうだし・・・。」 ヒカリさんはそう言って笑った。 「ひっどぉい!それが目的なのねぇ・・・。」 私もそう言って笑う。 「そうよ!・・・なぁんてね。もうすぐ夏休みでしょ。またみんなで遊ぼうね。」 ヒカリさんはそう言って帰っていった。 一人残された病室で、私は沈黙に押しつぶされそうになった。 「やっぱり、早く治そう・・・。」 私はもぞもぞと布団に潜り込んだ。
最後に切手を貼ってちょっと封筒にキスをする。 今回はちょっと長くなったから重いなぁ・・・。 調子に乗って写真とかも入れちゃっているから料金足りないかもしれないなぁ。 ポストに入れないで郵便局の人に聞いてからにしよっと・・・。 私は書き上がった手紙を大事に鞄にしまう。 「レイ!?電話よぉ!」 お母さんが私を呼ぶ声がする。 「はぁい・・・誰から?」 電話口に出て、受話器を受け取りながら、聞いてみる。 「とっても意外な人からよ。」 お母さんはそう言って教えてくれない・・・。意外な人だったら声聞いても判らないじゃないの・・・。 「はい、もしもし・・・。」 『あ、レイちゃん?身体はもういいの?』 あれ?この声・・・。 「え?ユイおばさん?」 『やぁねぇ。おばさんなんて言わないの!って言っても、”お姉さん”にはもう無理があるかなぁ?』 あははは・・・うーん・・・。 ノーコメント・・・。 「そ、それで、何か御用でした?」 ユイおばさんはいつも元気だから調子狂っちゃう。 『あ、そうそう。もしももう元気なんだったらね。パスポートとっておいてね。』 え? 「あのぉ・・・それって・・・。」 『そうよ。うちで今度一度シンジの所に行くからね。レイちゃんも一緒にどうかと思ってね。』 !!! 「あ、あの、あのあの・・・・・・。」 『はい、ストップ。』 「・・・。」 『行きたいか行きたくないかだけ教えてね。』 「い、行きたいです!!で、でも、いいんですか?」 『行きたいか行きたくないか、だけでいいーの。じゃ、ホテル、とっておくからね。夏休み、空けておいてねぇ。』 電話が切れてからも、私は降って湧いた幸運が信じられなかった。 「どうしたのぉ?ぼぉっとして・・・?」 お母さんが私に話しかけてくれなかったら、きっとずっとこのままだったと思う・・・。 「あの・・・。お母さん。ユイおばさん、私を碇君の所に連れて行ってくれるって・・・。」 私は今の電話の内容を伝えた。 「ふぅん・・・それで?」 意外とお母さんは無感動だ・・・。 「え?だから・・・行きたいなぁって・・・。ダメ・・・かな・・・?」 目の前まで広がっていた夢のような話がふっと消えてしまいそうな錯覚がする・・・。 「だって・・・。パスポートとるのに時間がかかるわよ?夏休みなんて言ったら順番待ちで大変よ?もしかしたら、夏休みにはもう間に合わないかも・・・。」 え・・・・・・? 私はすっかり力が抜けてその場に座り込んでしまった。 「嘘ぉ・・・。」 あんまりがっかりし過ぎて涙も出ない・・・。 「う・そ!」 え? 「はい。プレゼント。」 私の目の前に、真っ赤なパスポート・・・。 「あなたが入院している時にね、ユイとそんな話になってね。向こうも”シンジは何持って行っても喜ばないだろうけどレイちゃんを連れて行ったら泣いて喜ぶだろう”ってね。」 ぱちん・・・。 「い、痛いわね。」 ぺちぺちぺちぺちぺち・・・。 「ひっどぉおおおおおおおおおいっ!!」 私はお母さんを叩き続けた。 涙が流れる。 でも、これは、嬉しい涙・・・。 待っててね。碇君・・・。 私の心はもう遠くの空まで飛んでいた。 |