コンビニ:10.廃棄T by harumi
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深夜午前0時、その作業は始まる。 鮮度管理である。 我が系列のコンビニでは(ほとんどのコンビニがそうであると思うが)一日3回、賞味期限の迫った食品を廃棄処分する。 わかりやすく言うと捨ててしまうんですな。 おにぎりや弁当、パン、惣菜、紙パック牛乳、デザート・・ ありとあらゆるものを捨てる。 平均の廃棄量は原価にして約1万円程度。 多分昼間の廃棄はもっと多いと思うので、一日3万円くらいは廃棄しているだろう。 しかし連休などに大量に弁当を仕入れて、雨なんか降った日には、廃棄は普段の2倍3倍、とんでもない量を捨てることとなる。 実際に20かご分、原価で約5万円くらいを捨てたことがある。 コンビニの弁当の売れ行き、しいてはコンビニ自体の儲けは、休日の天気に大きく左右されると言っても過言ではない。 さてさて、例えばその地区の系列コンビニの本店(本部?)のような所だと厳しいのだが、うちのようなコンビニではOKなのだ。 何って、廃棄した食料の持ち帰りである。 俺的には、これがないとコンビニバイトの意味がない。 とは言っても、我がコンビニでも持ち帰りを認められているのは深夜のバイトのみ。 それ以外の、例えば昼間のバイトは許可されていない。 いづれの場合もバックルーム(スタッフルーム兼物置)で食べるのはOKであるが、そりゃあ当然だろう。 私がこのお店のバイトの申し込みをしたときは、持ち帰りについてはよく確認した。 深夜バイトならOK。 もし深夜のバイトでも持ち帰りを許可しないなんて事なら、俺はこのコンビニでバイトをしていない。 で、ここが難しいところなのだが、深夜以外ということは朝もダメである。 ということは、朝のバイトの人に俺が廃棄を持って帰るところを見られてはまずい。 (一応ないしょということになっているのだ) 交代して朝のバイトが働いている横を、でっかい袋を抱えて通り過ぎたのでは、その袋の中身が何なのかはバレバレである。 朝のバイトに見つからないような方法を考えなければならない。 車でバイトに来ているなら、簡単である。 あらかじめ、持って帰るものを車につんでしまえばいいのだ。 だが、俺は車を持っていない。 さっきも書いたように、結構な量の廃棄が出る。 当然持って帰る廃棄の量もかなりのものだ。 俺にとっては大事な食料源。 ここで廃棄をGETできなかったら、エンゲル係数は見る見る上昇することは間違いない。 なんとしても、朝のバイトにはばれないようにしつつ、我が食糧を確保しなければならないのだ。 これは、自然の猛威と人間の脅威に敢然と立ち向かい、貧相な知恵によって戦いを挑み、「食糧難」という危機を乗り越えたある男の記録である・・ まずは廃棄処理の仕方を簡単にまとめよう。 店内の賞味期限が迫った食料をかごにすべて集めたら、バックルームでそれらを登録。 すべての登録が終了すると、廃棄分がPOSに記録される。 この時点で登録した食料は、記録上はすべて捨てたことになる。 その中からバイト中に食べるもの、持って帰るもの、実際に捨ててしまうものを選別する。 捨ててしまうものは段ボールに適当に詰める。 この時、実際に捨ててしまうものでも、割り箸がついているものはそれらをはずしておく。 これは後で持ち帰って、自分で使うのである。 で、持って帰るものはコンビニの袋を二重にしたものに詰めて、口をしっかり結ぶ。 そして店外の、人があまり通りそうにないところで、店からはわかりにくい場所にあらかじめ置いておく。 バイトが終わったら何気なくその場所に立ち寄り、その袋を持って帰るという寸法である。 この作戦はバイト開始時から長い間有効だったのだが、ある日不測の事態が起こった。 バイトが終わってその袋を取りに行くと、なんとカラスがたかっているではないか。 ビニールの袋は例え二重にしても強度が弱い。 おそらく臭いも出やすいだろう。 カラスにこの袋を発見されたのは、ある日全く突然だった。 それまでは何もなかったのだ。 それだけに、ぐちゃぐちゃになってしまった袋を目撃したときの俺のショックは計り知れなかった。 今思うと、引き裂かれ、中のものをぶちまけているその様は、何かのシーンによく似ていた・・・ すぐに対応策を練った。 持って歩くには多少恥ずかしいが、段ボールに詰めてしまえばいいのだ。 勿論本当に捨ててしまうものとは別の段ボールである。 上の部分をガムテープでふさげば、臭いも出ない。 さらにその上に、食料品の輸送時に使用するプラスティック製の大きなトレイを載せる。 上にものを載せれば、まさかそれを動かして蓋を開けることなど、カラスには出来まい。 そして保管場所を前の場所から少し移動すれば・・・ 完璧だ。自画自賛。 これを思いついたときは、穴が見つからなかった。 いやほんとに。 第二の作戦は早速次から実行に移され、そして自らの考えの甘さ、カラスの賢さを思い知ることとなった。 カラスはその鋭いくちばしで、横からつついて段ボールに穴を開けてしまうのだ。 強度で言えば、確かに段ボールはビニールよりもましだが、それでもカラスのくちばしに耐えうるものではない。 臭いはなくとも、恐らく場所を覚えているのだろう。 少しくらい場所を変えたくらいではダメなのだ。 思ったよりもカラスは利口なのである。 では場所を全く違うところに移せばいいのか。 だが、通行人から見えにくくて、雨がしのげる場所などそうはない。 今までも既に、考えた上でベストと思っていた位置に配置していたのだ。 行き詰まってしまった。 ボロボロになった段ボールは、前回のビニール以上に俺の心にダメージを与えた。 二週連続で食料をGETできなかった俺の腹へのダメージも深刻だった。 思考力が鈍り、財布の中身も寒くなる。 だめだ、カラスには勝てない。 もう諦めるしかないのだろうか・・ このままカラスの攻撃に屈するしかないのか? もはや人類に、為すすべはないのか? だがしかし、どんなときでも、道は残されているのである。 我が黄色の脳細胞がそれに気付くのに、たいして時間はかからなかった。 つづく。 |