我が輩は猫ですの from Ophanim
使イ魔冥途編





 私は使い魔ですの。

 今は性悪女に囚われの身ですの。

 ぴこぴこぽこぺこぴこぴこぺ〜

 私が言ってるんじゃないですよ。

 性悪女がゲームに夢中なだけですの。

 あ〜、何のために捕まえたんですか?もうこうなったらジタバタしますので煮るのも焼くのもやめてください。

 「あ〜あ、終わっちゃった」

 魔女がつまらなそうに言います。そしておもむろにこっちを向きました〜〜。

 きゅぴ〜ん。

 「さて、猫ちゃんもどきちゃん。正体現さないとご飯あげますよ?

 へ?

 何て嬉しい拷問なんでしょ?何考えてけつかるんですかね〜。意外に頭弱かったりして。

 「で、当然、用はこれにしてもらいます。『する』前は屋敷のみんなも集めますからね〜」

 ね、猫砂っ!?

 ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい

 ついでにもう一つ、お食事中の方にもごめんなさい。

 実は私は魔の物なので、本来何も食べなくても良いのですが、食べたものについては出さないといけません。

 で、ここに来てから猫らしくするため、と言いつつもついつい口にする物全てが美味しくて……。

 夜中にこっそりお手洗いをお借りしていたのです、はい。

 猫の格好ではちょっとアレですので、普通に、人型で。

 なんて……拭けないし、いくら猫さんの真似とはいえ、舐められませんです。

 仕方ないです。私は化けの皮を剥がすことにしました。

 うう。

 ちょこなん。

 「まぁ、可愛い。思わず虐めたくなっちゃいますね〜」

 あぅち

 それにしても、どうしてばれたんでしょう?

 「それにしても、どうしてばれたのかって思ってますね〜?」

 び、びっくり……。

 「どうやら図星のようですね〜」

 ほんとですの。

 参りましたの。

 「あなた可愛いから特別に教えてあげるわ。わたし達にはそれぞれ隠された特殊な能力があるのよ」

 そんなの『月姫』プレーしている人には丸判りですわ。

 「そんなの『月姫』プレーしている人にはばればれだって思ってるでしょ?」

 ぎくぎくぎくぎくっ

 まるでコピーペーストしたかのようにばっちり判ってますですねぇ。

 「ふふふ。さっきまでの猫型よりも、今の方が表情が判りやすいですね〜。ますますわたしが有利です〜」

 な、なるほど。

 表情を読んでいたのですか。

 なんて………………なんて普通の能力っ!

 「普通じゃないですよ。わたしのは、『弱点把握』ですから」

 う!

 何かそういう言い方されるとなんとなくそれっぽいですの。

 って、え?

 「弱点把握?」

 「そ。だから、あなたが隠したがってることは、判ったわけ」

 むむむむ。

 意外と使えそうな能力ですね〜。隠せば隠すほど判ってしまうですか。

 あれ?

 でも……?

 あの……、そんな能力があったら、あんなことやこんなことされなかったんじゃないかしら?

 「槙久様のこと考えてますね?不満そうな顔してます〜」

 むむむ。

 「でも、わたし、実は『月姫』本編で言ってたようなことは槙久様からは受けてませんよ。槙久様もああいった立場の人の例に漏れず、弱点はたくさんありましたからね〜」

 へ???

 ど、どういうことですか???

 「後で説明するから待ってなさい。ま、と、いうわけで、その中でも特に彼の一番の弱点はご長男の四季様のことでした。で、わたしが槙久様に『遠野の当主のくせに責任を果たしてない』という点を毎日ちくちく指摘していたら、ある日それを気に病んだ槙久様が自殺しちゃったんですわ〜」

 うう……。

 なんだか同情しちゃいます。

 よっぽど非道い虐めが行われてたんですね〜。

 あれ?

 でも、それじゃ……。

 「あぁ、最初はほら、四季様です。わたしはほら、お気に入りでしたから。いやぁ、まぁ、それはそれ、うん。まぁ、若気の至りって奴で」

 いえ、その……。

 人と人との交わりはそんな言い方をするものではありませんわ。

 色々な愛情表現がありますし。

 「あの人、どうせ反転してたし、身体も丈夫だったから色々怪しい薬打つのが楽しくて

 って、愛情ちゃうわっ!!

 しかも、お気に入りって『あんたの』お気に入りかいっっっ!!!

 ……し、失礼しました。

 あ、でも、薬で弱ってたのに『しちゃった』ってことは、そこに愛を認めてもいいかもしれませんわ。本人は口で否定しても実は本心は、ってこと、ありますもんね。

 「薬間違えて四季様が狂っちゃってぇ、無理矢理やられちゃったんです〜。あはっ

 自業自得じゃぼけぇっっ!!!

 しかも、何の薬打ってるんですか〜っ!

 「わたしが気を失ってる間に四季様どっか行っちゃって今頃は魚の餌烏の餌か……」

 うう……。

 今明かされる『月姫』本編では語られなかった真実……。

 確かにこりゃ人には言えぬです。

 「ま、いっか、って感じ?」

 良いわけあるか、どあほぉっ!

 あ、でも、秋葉様は槙久様のことで気に病んで……。

 「それを説明するには翡翠ちゃんの能力についても説明しないとね〜」

 琥珀さんは指を一本立てて得意そうに鼻を高くしてます。

 むぅ。

 なんか、負けたって感じです。

 「実は翡翠ちゃんの能力は『妄想肥大化』です」

 待てや、こら。

 それじゃまるで世に言うヲタクじゃないですかーーーーっ!

 「ほえ?でも、本当だもの。志貴さんと一緒にいたんだったら一回くらい見たこと無い?」

 毎朝見てましたっ!

 今理解しましたっ!

 なるほどっ!

 このシリーズで初めてSSっぽい伏線がっ!

 「わたしは槙久様で遊ぶのに没頭していたんですが、翡翠ちゃんはわたしが槙久様の玩具にされていると妄想してたんだと思いますよ〜。で、それがどうにかして秋葉様の耳に入ってしまったのかも」

 ううううううっ。

 崩れてゆく気品溢れる『月姫』の世界……。

 「さて、冥途の土産には充分すぎましたわね」

 あ……。

 琥珀さんの目が再び怪しくきゅぴ〜んと光りました。

 あぁ…。

 忘れてました。

 自分の運命も、ジタバタするのも、最後のお別れを言うのも……。

 籠に黒い布がかけられて……。

 私はどこかに連れ去られていきます。

 さようなら、みなさん。

 このような形になりましたが、遠野家の実態調査を完遂できたことには満足しています。

 ただ、一つ心残りがあるとすれば、……まだご主人様と二人で街を歩いていないこととか、デートらしいデートをしてないこととか、アーネンエルベのタルトを丸ごと食べてみたかったとか………………。

 いえ。

 ただ一つ。

 立った一言。

 ご主人様から、『ありがとう』が、聞きたかった………………です。



























































 「はい。これはレンさんの分ですよ〜」

 ぱちくり

 「こんなに小さいんだったらワインとか飲ませちゃ駄目だったわね」

 「申し訳ありません、秋葉様。てっきり成猫かと思い、猫の年齢で計算してしまいました」

 翡翠さんは深々と頭を下げました。

 えと。

 あの……?

 これ、は、ど、どういうことでしょうか?

 私がどういう状況にあるか、と言うとですね。籠から出されたら、すぐ椅子に座らされたんですが。今は、その、遠野家の食卓でみなさんに囲まれて、豪華なお食事を前にしてるんですけれども???

 「翡翠は悪くないわ。悪いのは兄さんよ」

 「また俺か?秋葉は都合が悪くなると全部俺に押しつけるからなぁ?」

 ご主人様はおどけたようにそう言いながら、私のために取り皿に料理を装ってくれました。

 ありがとうございます。

 「兄さんっ!人聞きの悪いことを言わないで下さいっ!!そもそも、兄さんが一言、『新しい家族が増えた』って説明してくれれば何の問題もなかったんですっ!!

 か、家族だなんて、そんな。

 勿体ないです〜。

 「そんなこと言ったって、アルクェイドとかシエル先輩への秋葉の態度見てたら、女の子が増えるって言い難いじゃないか」

 ご主人様はそう言いながら、オレンジジュースの入ったグラスを口に運びました。

 「そっ!そ、それはそうですが、兄さん。まさかそんな小さな子にまで懸想するなんて趣味をお持ちだったんですか?」

 「ぶっ!ばっ、馬鹿なこと言うなよっ!

 ご主人様は飲みかけのオレンジジュースを吐き出して、顔を真っ赤にして反論してますの。

 うう。薄々判っていたとしても、そうきっぱり否定されるとちょっと悲しいですの。

 「あ、今の志貴さんの反応は怪しいですね〜」

 「こ、琥珀さんっ!!

 え?琥珀さんが言うって事は、期待しても良いんでしょうか??

 琥珀さんは私の耳元で『良かったですね』と言いながら、グラスにワインのような色の林檎ジュースを注いでくれました。

 あ、そういえば、琥珀さんで思い出しました。

 「あの。とっても嬉しいんですけど、さっきのあれは……?」

 私はもうすっかり死ぬ覚悟が……。

 琥珀さんは不思議そうに首を捻った後で、ぽん、と手を叩きました。

 「だから言ったでしょ?メイドの土産だって」

 …………つ、つまんね〜〜〜っ!



 私は使い魔ですの。

 今は遠野レンですの。


<終わりである>


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